本章ノ伍 一節「コムニア外交録:前編」
コムニア星州連邦 第42代大統領ウィリアム・A・ハリントンについて
第一期政権:白銀歴1200年1月20日(水)〜
第二期政権:白銀歴1204年1月20日(月)〜
白銀歴1204年の大統領選挙。
結論から言えば、
長きに渡り我が国を実質支配してきた 首都ワルモノンDC に巣食う既得権益――
金融エリートを筆頭に、軍産複合体、製薬企業、巨大IT企業ら、
すなわち “国家を超えた利権複合体” が、
マスメディアによる民意形成を用いて、
ウィリアムから政府官邸を奪還しようとした戦いであった。
しかし今回、
メディアの影響力は衰え、
不正は暴かれ、
世論は操作できず、
彼らは防戦一方となった。
結果、ウィリアムは再選した。
利権複合体が最も恐れるのは、ウィリアムが掲げる 自国優先政策 である。
それは彼らが国外市場で吸ってきた“甘い汁”を断ち切るからだ。
私が深く懸念しているのは、
この利権複合体と結びついた 民衆党上層部 が、次回の中間選挙で敗北した場合、
何をしでかすかわからないという点である。
追い詰められた彼らは、最終的には お抱えのテロ組織 まで動員し、
我が国を内乱状態へと引きずり込む可能性すらある。
ウィリアム政権が誕生するまで、我が国の政権交代は 予定調和の中で回っていた。
協和党が勝とうが、民衆党が勝とうが、
その裏で政策を決めていたのは常に利権複合体であり、国民の知らぬところで国家運営を“代行”してきたのだから。
しかし、ウィリアムは腐敗を嫌い、その秩序ごと破壊しようとしている。
それが我が国を滅ぼすのか、
それとも救うのか――
今はまだ誰にもわからない。
ただひとつ確かなのは、
マスメディアを軸とした世界秩序は、すでに大きな転換点を迎えている ということだ。
私は切に祈る。
我が国の主権が、
再び国民の手に戻ることを。
――コムニア星州連邦 第45代副大統領 アンゴル・ゴア 手記
後の書籍『不都合な事実』より抜粋 ――
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