本章ノ壱 二節「Battle of Besitiarium」

白銀歴1204年9月22日(月)
惑星ルナ=クラリオン 星都独立領ルナルナ
王室移動要塞「天宮城(うぐしろ)」構内 

ーー警務庁:赤イ兎 総司令 兎団 将萌が放った言葉ーー

理念も思想も業態も違う連中らが、巨大な利権を分け合うために共生している。
 奴らの“餌”は税金だ。

 便宜的に、各界に巣食うそうした連中を“ウラガネ”、個人を“ウラガネビト”と呼ぶことにした
 我々の目的は、この国に潜むウラガネの排除ーーー

その言葉が、今まさに現実となっていた。
ベスティアリウム―― ルナルナ領内の少惑星《アドレナ》にある とある私邸。

白銀歴1204年12月5日(金)、月京 竹娘(つきのみや たけのこ)はその影と対峙することになる。
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 本章ノ壱 昔醒の兆し 編
      二節 attle of esitiarium

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about ベスティアリウム

ベスティアリウム――
ルナルナ領内の少惑星《アドレナ》に存在する、
世界有数の化粧品企業「鳳栄(ほうえい)コスメティクス」を擁する「伏原(ふくはら)財団」の監事にして、
同社の実質的な経営実務を取り仕切る男――鷹栖太郎(たかはし たろう)の私邸。

表向きは化粧品業界の社交場。

しかし実態は、違法コピー品の生産工場であり、さらに裏では、生体兵器“魔物”の製造・売買が行われている。

敷地の地下には、古代帝国のコロッセオを模した巨大な闘技場がそびえ立つ。

そこでは各国から誘拐された“生贄”を魔物と戦わせる興行が日常的に行われ、
観客席は場内から丸見え――
「勝者は存在しない」という絶対的な自信の象徴だった。

施設全体にはAI監視網、自律兵器、生体センサーが張り巡らされ、
侵入者が生きて帰る可能性は限りなくゼロに近い。

――その地獄に、今まさに三人の“獲物”が連れ込まれようとしていた。

三人の生贄たち

白銀歴1204年12月5日(金) 深夜
ルナルナ領内 少惑星《アドレナ》 ベスティアリウム 地下闘技場

司会の甲高い声が響く。

「みなさん、お待たせしました!
 生贄の解体ショー……ではなく、魔物とのバトルの始まりです!
 さぁ〜〜まずは、本日の“生贄”入場のお時間です!!
 皆様が”アンケート”で選んだ子は現れるのか!?注目ですよ〜〜!!」

観客
「おおおお!!」
「誰だ!?誰が来た!?」
「衣装で当てるの好きなんだよな〜!」

英数字が印字された頭巾で顔を隠され、
それぞれ“観客が選んだ衣装”を着せられた三人の生贄が連れられてくる。

三人の首には、銀色の金属製の首輪がはめられていた。
小さなマイクがついており、生贄の声はすべて場内スピーカーに拡声される仕組みだ。

観客 「お、声拾ってるぞ」 「悲鳴がよく聞こえるやつだ」 「これが一番好きなんだよな〜」

頭巾1:カウガールビキニ

頭巾3:白薔薇を胸に抱いた純白の喪服ドレス

頭巾Ex:黒ワイシャツ・短パン・リボン・素足の未完成制服
さらに、手品師が使うような不気味な箱が台車に載せられて運ばれてきた。


観客席から歓声と笑いが飛ぶ。 事前案内では生贄の詳細は伏せられているらしい。

司会 「それでは、生贄たちのご紹介です!」

頭巾1が剥がされる。

「まずは、ルーシア帝国の大人気グラビアアイドル、ブリコ・モニトゥちゃん!
 全世界の少年たちが彼女の悩殺ダイナマイトボディに釘付けだったことでしょう!
 デビュー時に大ブレイクした“カウガールビキニ”で登場です!!」

観客
「うおおお!!」
「この衣装で写真集買ったわ!!」

司会は続ける。

「なんと!
 ブリコちゃんをここへ送るよう我々にコンタクトを取ってきたのは、芸能事務所に勤める実の姉!
 妹の美貌に嫉妬したのか、はたまた大金が欲しかっただけなのか……いやぁ、家族って怖いですねぇ」


ブリコはその場に崩れ落ちた。

「……嘘。嘘だよね……?お姉ちゃんが……私を……?」

次の頭巾3が剥がされる。

「続いては、アルビオニア国籍の大学生、ローズ・マリガンちゃんです。
 なんと本日は、母親リディアさんが主演した舞台《白薔薇の嘆き》の衣装で登場です!!
 いやぁ〜、親子そろって舞台に立つなんて素敵ですねぇ〜!

観客がざわつく。

司会

「そう、この子は――
 当時56歳の王配と19歳の舞台女優リディアさんとの間に生まれた、アルビオニア王室の忌子なのです♪
 そんな出自、消したい人がいるのも当然ですよねぇ♪」


ローズは震える声で呟いた。

「お母……さん?
 そんな……
 ……お父さんは死んだって……
 学生時代からの付き合いだったって……」

観客が嘲笑する。
「リディアはどうしたー!」
「俺、あいつのファンだったんだよ!」
「母娘セットで見たかったのになー。料理するのはそっちの係だけどよ」


司会は肩をすくめた。

「皆様、事前のご案内では“母娘セット”をお届けする予定でしたが……
 残念ながら、母親のリディアさんは連れて来られませんでした。」


「はぁ?」「楽しみにしてたのに!」


司会は軽く笑う。

「いやぁ、あの……頭巾2……じゃなくてリディアさん、思ったより暴れましてね。
 実行犯の方々も“商品”を傷つけないように頑張ったんですが……
 娘を庇って抵抗してくるもので。ああいうの、困るんですよねぇ。効率が悪くて。」


箱の蓋が開く。

中には、もはや“人の形”を留めていない何か。

ローズ 「いやあああああああ!!お母さん!! お母さん!!」

その絶叫は、首輪のマイクを通して場内に響き渡った。


観客はその悲鳴すら娯楽として笑った。

観客
「リディアの最終公演より盛り上がってんぞ」
「親子で悲鳴の二本立てとか最高のショーだな」


司会

「母親の愛って、ほんと迷惑ですよねぇ。おかげで予定が狂ってしまいました。」

司会が手を叩く。

「その代わりと言っては何ですが、特別商品をご用意いたしました。
 何か制服姿のようですが……もう分かった方は、相当なマニアですねぇ。」

頭巾Exが剥がされる。

「今年9月、彗星のように現れた―― ルナルナ王室の近衛騎士、月京竹娘ちゃんです!
 本日はジャケットとブーツを剥ぎ取った、特別仕様の“未完成近衛スタイル”で登場です!!
 いやぁ〜、これはレアですよ〜〜!!」

観客が沸き立つ。

その足元には、 奪われた装備が“戦利品”のように雑に並べられていた。

王月武装《寝待太刀》のレプリカ。
天ノ羽衣《天竹織羽》の模造布。
そして、偽情報を詰め込んだ携帯端末

職員が端末を拾い上げ、観客に見せつけるように振った。
「見ろよこれ! 王室の近衛が使ってる“機密端末”だってよ!  中身は……なんだこれ、データだらけじゃねぇか!」

別の職員が笑いながら覗き込む。
「へっ、どうせ大したもんじゃねぇよ。後でLPSDに渡してやるか?」

竹娘は表情を崩さず、
(……好きにすれば? 鯛を釣るための“撒き餌”なんだから)
と心の中でだけ呟いた。

――闘技場の最上部。
厚い防弾ガラスに囲まれたVIP監視室で、一人の男が静かに興行を見下ろしていた。

太郎 「……ほう。これが あの忌々しい王室の、新しい玩具か。」

司会の甲高い声とは対照的に、太郎の声は低く、冷たかった。

太郎 「さて……どれほど“私に貢献してくれる”?  見せてもらおうか、王室の犬。」

司会

「ブリコちゃん、ローズちゃんに比べて色気と乳は全然足りませんが……まあ、スタイルは悪くないですね。
 最期にどんな声で鳴いてくれるのか、楽しみです。」


竹娘「💢」

竹娘(心の声)「……制服を中途半端に剥がして戦わせるとか、趣味悪すぎでしょ」

司会が手を広げる。

「さて、戦いに出る順番を、本人達に話し合って決めてもらいましょう!」


観客が笑いながら囁き合う。

「この時間好きなんだよなー。みんな行きたくないって喚くのが面白くてよ」
「行きたくないって、逝きたくないのダジャレじゃね?」
「先週の男なんか親友を突き出してて笑ったわ」

「それと、生贄の皆さんには“武器”を選んでいただきます!
 どれもバラエティ豊かに古今東西様々な物を取り揃えました!」

台車に載せられた武器が運ばれてくる。
錆びた短剣、折れた槍、木の棒、割れた盾、鎖の切れ端、旗、鍋の蓋……

司会
「ちなみに〜、どれを選んでも“魔物の皮膚は傷つきません”のでご安心を!
 あくまで気休め、気休め♪」

ブリコは短剣を両手で握りしめ、 刃先が震えてカチカチと音を立てていた。

ローズは頭を抱えてうずくまる。 「どれを選んでも……死ぬだけ……」


司会
「本番開始は15分後です。あ、それまでに”アンケート”のご回答をお忘れなく!」


観客席のあちこちで端末が光り始める。
画面には、各国の少年少女の顔写真、年齢、プロフィール。
「難易度」「成功報酬」「人気度」の数値。

――得票数が高かった子が、次に誘拐される。

「この子可愛いじゃん。連れてこいよ」
「こっちはスタイル良いな。来週見たいわ」
「投票した子が選ばれたらしたらポイント入るし」

ブリコとローズの心が砕けていく。

「……助けて……誰か……もう……いや……」

絶望の沈黙が落ちた。


竹娘はそっと二人の肩に手を置いた。

「ローズちゃん、ブリコちゃん。大丈夫。私を信じて見ててね。」


二人は涙の中で竹娘を見上げる。

竹娘は小さく微笑んだ。

「……ねえ、二人とも。私、こう見えて“ちょっとだけ”強いんだよ。だから大丈夫。ここから先は、私に任せて。」


震える手を握り返す。

「大丈夫。私、こういうの得意だから。」


その言葉は、絶望の底に落ちていた二人の心に、ほんの少しだけ光を灯した。


司会
「それではショーを開始します!!お三方、戦いに出る順番は決まりましたか?」

竹娘は毅然と手を挙げた。

竹娘
「はい、私が先鋒も中堅も大将も全部やります。
 あ、そうだ。武器を選びたいので、この手枷、外してもらえます?」


観客の怒号が飛ぶ。
「調子に乗るな!!!」

「はあ? 正義の味方にでもなったつもり?」
「まさか魔物に勝てる気でいるんじゃね?」
「儀典官のお遊びじゃねーんだぞ!」


――戦いを前に、竹娘は与えられた任務の説明を思い出していた。

回想:潜入任務の説明


「――ラゴモルファ隊員二人との共同作戦?」

竹娘が眉をひそめると、兎団は淡々と頷いた。

「正確には、事前に潜入している兎娘を含めて四人だ。」

兎団の声は冷静で、しかしその奥に緊張が滲んでいる。

「王室が捕らえたウラガネビトを使い、ベスティアリウム側に“竹娘捕獲”の相談をさせる。
 ――お前はわざと誘拐される囮、という訳だ。」

兎団は続けた。
「なお、お前の王月武装《寝待太刀》、天ノ羽衣《天竹織羽》、携帯端末は奪われる前提のレプリカを用意してある
 本物はお前の部屋に置いておけ。」

竹娘
「……つまり、丸腰で放り込まれて、魔物相手に“時間稼ぎ”しろってことですね。
 派手どころか、悪趣味じゃないですか。」

兎団
「そう。目標は試合開始から25分だ。」


竹娘
「……25分?」


兎団
「最初の25分で、兎娘が観客アンケートをハックし、観客情報を吸い上げる。
 兎娘のタスクが完了したら、ラゴモルファ隊員が5分以内にターゲット――鷹栖太郎と司会を捕縛し、闘技場にいるお前と合流する。」


 その後、ルナルナ公共安全総局(Lunarna Public Safety Directorate 通称:LPSD)の機動隊が突入・制圧する。
 制圧完了までに全員で離脱しろ。立ちはだかる敵は撃滅して構わん。」


竹娘
「観客はどうなさるおつもりで?」


兎団
「逃がす。泳がせる。
 奴らの背後にいる各国各界のウラガネを炙り出すためだ。」

竹娘は腕を組み、困ったような笑顔で冗談交じりのため息をついた。
「随分と簡単に言ってくれますね。」


「その嬢ちゃんの言う通りだぜ~、LPSDが来るまでの30分で全て終わらせろってか!? 相変わらず無茶言うなぁ。」
その時、背後から陽気な声が響いた。

「よろしくな!」
スクワットを繰り返す巨漢――ラゴモルファ隊員のクイラ。


続いて、マスケット銃をくるくる回しながらポーズを取るふくよかな女性が笑った。
「見てくれが良かったら、私が囮役買ってやるんだけどな!」

セレグレア。
その笑顔には余裕があり、戦場慣れした者の落ち着きがあった。


兎団
「お前の実力なら魔物を屠るのも容易だろうが……兎娘の情報収集が成功する様……
 25分は絶対に稼げ。
 変態客どもの嗜虐心を刺激し、戦いを長引かせろ。」


竹娘
「(嗜虐心、ね……こんな任務じゃなかったら、演技 楽しめそうなんだけどな。) 了解。」

兎団
「各自、兎娘から送られたベスティアリウムの情報――特に間取り図は頭に叩き込んでおけ。」


竹娘
「兎娘さんの特徴を教えてください。私は会ったこともなければ、公式記録にも情報がございませんので。」

兎団
「この任務を終えたら、お前と同じく“名家の末裔”になる予定だからな。
 金髪に桃色の瞳のチビ女だ。」

竹娘は頷き、深く息を吸った。
「了解。……では、魑魅魍魎どもの群れに 飛び込んで参ります!!!」

Battle of Besitiarium

1戦目:vs「ブタニク」

闘技場の照明が一瞬落ち、 巨大スクリーンにノイズ混じりの映像が映し出される。
低い電子音とともに、黒背景に白い文字が浮かぶ。

🟥 《ポルクス級魔獣》紹介

— B E S T I A R I U M B I O – W E A P O N S —

画面が切り替わり、豚魔獣のシルエットが浮かび上がる。 背後には軍事施設のような無機質な壁。

【SPEC】
・分類:生体兵器(近接破壊型)
・耐久:A
・攻撃性:A+
・制御難度:B
・推奨用途:反乱鎮圧/戦場掃討/娯楽ショー

映像は、豚魔獣が檻を破壊するスローモーションへ。 観客席から歓声が上がる。

🟦 【DEMO CLIP】過去のショー映像が流れる。

・巨大な影が跳ね上がり、観客が沸く
・地面が揺れ、砂煙が舞う
・悲鳴と歓声が混じる音声だけが響く


司会(映像ナレーション)
「高い攻撃性と耐久性を誇る、ベスティアリウムの人気アクター! 本日は特別に、最新ロットの個体をお披露目します!」

🟩 【PURCHASE INFO】画面が明るい色調に変わる。

★同型個体の購入はこちら! アクセスコード:PORK-AX77 価格:応相談(軍事利用ライセンス込み)
※在庫に限りがあります
※生体兵器のため返品不可
※個体差があります

観客 「お、今日のロット買えるのか!」 「前のより動き良さそうだな!」

竹娘(心の声) 「……通販番組じゃないんだから。」

🟧 【ENTRY】
画面が赤く染まり、 巨大な影が通路の奥から現れる。

司会
「さて、本日のバトルアクターは―― 大人気の豚魔獣《ブタニク》くんです!
 美少女の生贄達を前に大興奮しております!」

竹娘 「び、美少女……(ちょっと嬉しいのが悔しい)」

観客 「ブーちゃん頑張れー!」 「ちょっとは手加減しろよー!」 「前回の“アレ”はやりすぎだったけどな!」 (※引き裂くジェスチャー)

司会 「ブタニクくーん、1人目の肉は硬そうだけど、 2人目、3人目は柔らかくて脂の乗った極上肉が待ってるぞー!」

竹娘「💢」 「硬そう? 柔軟なんですけど!? (……確かに体脂肪率は低めだけど……)」

観客 「え、そこ怒るの?」 「かわいいなこの子」 「いや怒るポイントそこかよ!」

司会 「おおっと〜? 竹娘ちゃん、まさかの“肉質評価”にブチギレだぁ〜!」

ブタニク暴走の結果

巨体を揺らしながら、よだれを垂らし、 ブタニクが竹娘を舐め回すように見つめる。

ブタニク
「ぐぽぽ……確かに脂は乗ってなさそうだけど美味しそうだぽー…… たまには赤身肉も良いもんだぽぽぽ……」

竹娘(心の声) 「くっ……臭っ……」


突如、ブタニクが突進する。

ブタニク 「もう我慢できな~い!!!い、いただきマンモスぅううう!!」


トレーナー 「ま、待て! まだあの娘の手枷を外してないし、武器も渡してな――」


言い終わる前に。

竹娘の身体が―― ふっ、と消えた。

観客 「え?」 「消えた?」 「瞬間移動?」


次の瞬間。

ドグチャッ!!!
竹娘の足が、 ブタニクの後頭部から首の後ろに正確に突き刺さる。
延髄蹴り。 それも、プロで唸るほどの完璧な角度。
巨体が顔面から地面に倒れ込み、 ドゴォォォン!! と沈む。

砂煙が舞い上がり、 闘技場が一瞬静まり返る。
ブタニクは痙攣し、やがて動かなくなった。

観客 「…………」 「…………え?」 「…………死んだ?」

司会 「えっ……? あっ……? えっ……?」

竹娘は短パンの裾を軽く払って立ち上がる。

竹娘 「お生憎さま。あなたのウンコになるつもり、ないの。」

竹娘(心の声) 「(あ、やっちゃった。一瞬で倒しちゃった…… まさかこれで終わりじゃないよね?)」

司会の動揺

司会の耳元の通信機が震える。 太郎の怒声が漏れ聞こえる。

司会 「さ、さぁー! とんでもないことになりましたぁ!! まさかルナルナの近衛騎士がこんなに強かったとはぁ!! こ、これは想定外!!」

声が裏返っている。 余裕が消え、焦りが滲む。


司会 「そ、それでは……久しぶりに……軍事作戦にも投入される強力な個体を…… つ、連れてきましょう!!」


観客 「おおおお!!」 「やっと本番か!」 「さっきのは前菜だろ!」

――その喧騒の中。

ブリコは、さっきまで震えていたとは思えないほど明るい声で叫んだ。
ブリコ 「すごいよ竹娘ちゃん!!いっけ〜〜!!」
片腕を高く上げ、涙目のまま笑っている。


一方でローズは、 竹娘がブタニクを一撃で沈めた光景をまだ理解できず、 呆然と立ち尽くしていた。
ローズ 「……なに……今の……?  人間が……あんな……」

観客はその様子に苛立ちを募らせる。

観客
「はぁ?生贄同士で盛り上がってんじゃねぇよ」
「調子に乗ってんじゃねぇぞ!」
「次はもっと派手なの出せよ!!」


竹娘(心の声) 「(そうだよね。 こいつらは、私たちの死を諦めない。)」

――試合開始から4分。

2戦目:vs「カマキリ人間」

🟥 《テレサロイド・シリーズ》紹介

闘技場の照明が落ち、巨大スクリーンが再び点灯する。 ノイズ混じりの電子音とともに、黒背景に白文字が浮かぶ。


— B E S T I A R I U M B I O – W E A P O N S —

・ベース:故カンフー俳優「オシボ・リー」のクローン
・融合体:昆虫魔獣(カマキリ種)
・装甲:黒色ラバー拘束スーツ
★商品名:テレサロイド
★バトルアクター名:カマキリ人間

画面が切り替わる。


🟦 【DEMO CLIP】

司会(ナレーション)
「こちらは、某国の“防衛大臣一家”の暗殺任務に投入された際の記録映像です!」


観客 「お、来た来た!」

映像には、 一家の寝室に静かに侵入するカマキリ人間の視点。

・子どもが寝返りを打つ
・妻が目を覚ます
・大臣が叫ぶ間もなく切り刻まれる


観客 「うわ、マジでこいつだったのか!」 「不法移民排除法とか言ってたクソ大臣だろ?」 「そりゃ消されるわな〜」

竹娘(心の声) 「……ウラガネビトってのは犯罪の証拠を見せたがるって聞いたけど、こんなにあからさまにやるなんてね。」


🟩 【PURCHASE INFO】

★同型個体の購入はこちら!
アクセスコード:MANT-TR42
価格:応相談(5体ロット単位)
※受注生産品/標準納期2ヶ月
※返品不可 ※無償保証期間内のオーバーホール半額

観客
「軍で使われてたやつだよな?」
「領主に勧めてみるか」
「暗殺もできて娯楽ショーもできるとか万能じゃん」


竹娘(心の声)
「(……軍はもう使ってないよ。証拠が残りすぎるから。
  まぁ この人たちは……“自分たちも使い捨てられる側”の可能性すら想像できないのかも。)」


🟧 【ENTRY】

画面が赤く染まり、 影からスラっとした男性が現れる。

次の瞬間、 皮膚が裂け、黒い拘束スーツの隙間から 昆虫の腕が二対、ギチギチと音を立てて伸びる。

司会 「人間社会にも擬態可能な優秀な製品です!  ブタニク君ほどの個性はありませんが、  その分“仕事は確実”ですよ〜!」

カマキリ人間が咆哮しながら入場する。

竹娘(心の声) 「(リーさん主演の映画好きだから……  この瞬間見るの、ほんと嫌……)」

10分ちょい

カマキリ人間 「ギチチチチ……!」


竹娘は“恐怖に震える少女”の表情を作りあげた(※演技)


観客 「いいぞ!!」 「その顔だ!!」 「さっきみたいに余裕ぶるなよ!!」

竹娘(心の声) 「(宇宙海賊の頃、いろんな人を欺いてきた経験が……こんなとこで活きるなんて。)」

カマキリ腕が高速で突き出される。 竹娘はギリギリで避け続ける。

竹娘 「あ……くっ……!」(※演技)

肩で息をしはじめ、額に汗を浮かべる“フリ”。


観客 「追い詰めてるぞ!!」 「そのまま刺せ!!」

竹娘(心の声) 「(隙だらけだけど…うまく時間稼がなきゃ。)」

カマキリ人間が前蹴りを放つ。

竹娘 「っ……ぐぅっ!!」(※演技)

わざと腹で受けて派手に吹っ飛ぶ。 砂埃を上げて転がり、唾液を吐きだし咳き込む。

竹娘 「はぁっ……はぁっ……!」
脂汗がだらりと流れる。(※演技)

ブリコ「竹娘ちゃん!!!」

観客 「よし!!効いてる!!」 「もっとやれ!!」「…あばら折れてんじゃね?」

司会 「おおっと〜!? 竹娘ちゃん、かなりダメージを受けているようです!!」

竹娘(心の声) 「(体内時計で……あと14分。 うーん、まだまだ長いなぁ。)」

カマキリ人間が腕を振り下ろす。

竹娘 「きゃああああ!!」(※演技)

ギリギリで避ける。 観客は大興奮。

観客 「惜しい!!」 「次こそ刺さる!!」 「もっと追い詰めろ!!」

竹娘(心の声) 「(刺さりそうに見えてるようで一安心。私、スタント女優もイケるな。)」

竹娘は後ろに跳びながら、 両手を前に出す。

カマキリ腕の刃が――

スパァン!!

木の手枷だけを切り裂いた。

観客 「おおおおお!!!」

竹娘(心の声) 「(うん、この方がシネマティック。)」

カマキリ人間が再び突進してくる。

竹娘は一瞬だけ表情を消し―― その手首を掴む。


そ瞬間、竹娘の指先がわずかに力を込める。

ミシ……ッ。


観客 「え?」


カマキリ人間の腕が、不自然な角度に折れ曲がる。 竹娘はそのまま、折れた腕を“返すように”押し出した。

カマキリ人間自身の刃が、 自分の胸部装甲に深く突き刺さる。


観客 「……は?」 「自分の腕で刺された……?」 「何が起きたんだ……?」


竹娘は軽く息を吐いた。

竹娘 「ふぅ……危なかった……(※演技)」

カマキリ人間は膝から崩れ落ち、砂埃を巻き上げて倒れ込んだ。

司会
「え、え〜〜……!?  カマキリ人間《テレサロイド》くん、まさかの……戦闘不能……!?  こ、これは……想定外!!」


竹娘(心の声) 「(……あと12分。  この調子なら、なんとかなるかな。)」

ブリコは勢いよく立ち上がった。

ブリコ 「やったぁぁ!!竹娘ちゃん最っ高!!  そのまま全部やっちゃえーー!!」

1戦目よりも声が大きく、 涙ではなく“興奮の笑顔”になっている。

ローズは胸に手を当て、 震えながらも竹娘をしっかりと見つめていた。

ローズ 「……すごい……  本当に……勝ってる……  もしかして……生きられる……?」

その声には、 1戦目にはなかった“希望”がわずかに混じっていた。

観客の狂気

化粧品企業の大株主・老婆 が立ち上がって怒号が響き渡る
「何やってるのよ!! あの可愛い顔を早く恐怖に歪めて頂戴!! 動きを封じたら、ゆっくり壊していくのよ!!」
あっけに観客 「そうだ!!」 「もっと苦しませろ!!」

竹娘(心の声) 「(……ほんと怖。)」

――試合開始から16分。

3戦目:vs「クモ女」

闘技場の照明が落ち、巨大スクリーンが点灯する。


— B E S T I A R I U M S P E C I A L U N I T —

司会(ナレーション)
「本日の3戦目は……興行用に特別製造された個体です。  強さは先ほどの2体とは比べ物になりません。  反響が良ければ商品化も検討します♪」


画面が切り替わる。

🟦 【MANUFACTURING CLIP】 ※2分ほどの“製造過程”映像

・「子どもだけは助けて……」と泣き叫ぶ母親
・拘束台に固定される ・頭部に電極が刺され、意識が途切れる
・黒い糸のようなものが体表に広がっていく
・下半身が膨張し、卵嚢のようなものが形成される
・医療スタッフが淡々と作業を続ける


観客 「おお〜〜」 「これ生きたまま改造してんの?」 「子ども守ろうとしてこうなるとか皮肉だな」


司会 「リディアさんもそうでしたが、  子を庇ってこんな……理解に苦しみますねぇ。」

惑星トト襲撃事件―― 竹娘は逃げ込んだ 避難船の中で父が息絶えた光景を思い出す。


竹娘(心の声) 「(……守ろうとしただけなのに。  どうしてこんな目に遭わなきゃいけないの……)」


竹娘の表情から“演技”が完全に消える。

観客 「……あれ?」 「さっきまでの疲労ぶりは?」 「なんか空気変わった?」

通路の奥から、 人間の上半身と、巨大なクモの下半身を持つ影が現れる。

クモ女 「……ころして……ころして……」

生前の意識が残っているのか判別できない、 無機質で壊れた声。

観客 「うわ、喋ったぞ」 「これマジでやべぇやつじゃん」 「商品化したら売れそう」

クモ女の腹部が震え、 卵嚢から子グモが一斉に飛び出す。

司会 「おっと〜? アクシデント発生♪  子ども達の方に行っちゃいましたねぇ〜!」

ローズは腰が抜けて動けない。

ローズ 「ひ……っ……!」

ブリコは震える手で短剣を構え、 ローズの前に立ちはだかった。

ブリコ 「だ、大丈夫……! 私が……!」


観客 「おお、仲間守るとか青春かよ」 「でも無理だろw」

その瞬間―― ブリコとローズの足元に、 青白い雷撃が落ちた。

子グモたちが一瞬で消滅する。

観客 「えっ……?」 「魔法……?」 「何だ今の……?」

竹娘の手には、 青白い光の剣が顕現していた。


竹娘 「……ごめんなさい。」

竹娘の姿が、 “消えたように”見えた。


次の瞬間―― クモ女の体が静かに崩れ落ちる。 切断面はあまりに滑らかで、 観客には何が起きたのか理解できない。
クモ女の顔は、どこか……安らいでいるように見えた。


観客 「……え?」 「斬……った……?」 「やばくね……?」


ブリコもローズも、 ただ呆然と竹娘を見つめていた。


竹娘は無言で、 クモ女の脚の残骸を拾い上げると――

司会の横へ投げつけ、 VIP監視室の太郎を真っ直ぐ睨みつけた。

ドンッ!! クモ女の脚が壁に深く突き刺さる。


司会 「ひいいいっ……!!」

太郎 「こ、小娘が……っ!!!」


観客 「……これ……もうショーじゃなくね?」 「やばいって……あの子……」


その瞬間、 闘技場と観客席を隔てる透明シールドが展開される。


司会 「し、シールド展開!?  え、えぇ〜〜!? な、なんで!?」

太郎の声が響く。


太郎 「……もう、なりふり構うな。  “ヤツ”を投入しろ。」

司会 「は、はいぃぃ!!」


――試合開始から19分。

4戦目:vs「名無し」 ×12体


闘技場の照明が落ち、巨大スクリーンが点灯する。

— B E S T I A R I U M P R O T O T Y P E —


🟦 【HISTORICAL RECORD】

・1200〜1000年前の古い記録映像
・地下に封じられた下級魔獣「ノーバディ」  (翼長3mのコウモリのような姿)
・政敵や反乱者を“処理”するために利用されていた
・次第に強大・巨大化していくー (映像はここで途切れる)


ローズは息を呑む。
ローズ 「……あれ……旧スペンサー王家の……?」


観客
「へぇ〜古典の教科書で見たやつだ」 「これを兵器化したのかよ」 「実話だったの?(笑)」

🟩 【DEVELOPMENT CLIP】

・ノーバディをヒト型に改造する映像
・黒いゲル状の肉体
・首から腹にかけて縦に裂けた“口”
・潜入任務用に調整中
・試作名:ノーバディⅡ
・アクター名:名無し


司会 「とある騎士団にちなんで、試作12体!  今日は特別に、全員連れてきました♪」

観客 「この狭い場で12体!?  乱戦で葬る気かよ!!」


――試合開始から22分。
竹娘(心の声) 「(彼らが来るまで……残り3分。  冷静さを取り戻さなきゃ……。)」

12体の名無しが、黒いゲルを滴らせながら入場する。

名無し 「……■■■■……」 (言語にならない呻き)


観客 「うわ、気持ち悪っ」 「でも強そうだな」 「12体なら勝てるだろ!」

竹娘は深呼吸し、 ブリコとローズの前に立つ。

竹娘は光剣を逆手に構え、 シールドに向けて雷撃を叩き込む。

バチィィィン!!


シールドが砕け、 その破片を利用して ブリコとローズの周囲に“即席の防壁”を作る。

ブリコ 「すご……!」

ローズ 「……竹娘さん……」


観客 「おい!?シールド壊したぞ!?」 「やばいって!!」 「司会!何とかしろよ!!」


司会 「ひ、ひぃぃっ……!!」

名無しが一斉に竹娘に襲いかかる。

竹娘は―― 無表情のまま、淡々と、正確に、静かに 次々と撃破していく。

・1体目:雷撃で消滅
・2体目:光剣で貫く
・3体目:跳躍して首元を断つ
・4体目:背後からの奇襲を反転して叩き落とす
・5〜11体目:ほぼ一瞬で処理


観客 「……え?」 「何体倒した?」 「数が……減ってる……?」 「怖……」


司会 「だ、だめだ……!  全然歯が立ってない……!!」


太郎 「……化け物め……」

竹娘(心の声) 「(あと1分……  ここで倒したら……時間を稼がないと……  ――もう1回女優、演ります!)」


竹娘はわざと攻撃を受け、 地面に叩きつけられる。

観客 「よっしゃああ!!」 「やっと効いた!!」 「殺せーーー!!」


ローズ 「竹娘さん!!」

ローズは走り寄ろうとするが、 防壁に阻まれる。


ブリコ 「ローズちゃん、だめ!!」


名無しが竹娘の髪を掴み、 ゆっくりと持ち上げる。

名無し 「……■■■……」


観客 「とどめだ!!」 「やれぇぇ!!」


――25分経過。

竹娘の目が―― 一瞬だけ、冷たく光る。

竹娘 「……なーんちゃって。」

光剣が閃き、 最後の名無しは静かに崩れ落ちる。

捕縛 → 救出 → 脱出開始

最後の「名無し」が崩れ落ちた瞬間、闘技場の照明がバツンと落ちた。


観客
「えっ……?」
「停電……?」
「何が起きてる!?」


暗闇の中で――
轟音。


次の瞬間には、すべてが“終わっていた”。
観客の目には映らない速度でクイラ&セレグレアの奇襲ーーー


セレグレアは観客席前方の司会を押さえ込み、そのまま闘技場内へ滑り込む。

同時に、
クイラはVIP席の太郎を拘束し、防弾ガラスをいとも簡単にぶち破って闘技場へ降り立った。


司会「痛い、痛ぁあい!!」

太郎「あが……な、何だ貴様――っ!?」


クイラ「おしゃべりの時間ねーんだわ。姉御、いつものよろしく。」

セレグレアは無言で二人を縛り上げ、顕現した兎型の召喚獣の口へ“収納”するように飲み込ませる。


クイラはブリコとローズを両脇に抱えた。


クイラ「セクハラで訴えねーでくれよ嬢ちゃんたち。オレ、こう見えて繊細なんだわ。」


ブリコ「ひゃっ……!」

ローズ「……っあ!」


セレグレア
「いい役者だったぜ~竹娘。
 こっちだ。兎娘が脱出ポイントで待機している。」


クイラ
「LPSD機動隊がココに来るまでにとんずらだな。」


竹娘
「……了解♪」


ブリコとローズは暗闇の中、竹娘の声に安堵した。


――この間、わずか1分。本来の目標5分を大幅短縮。

LPSD機動隊突入

非常用電源が作動し、闘技場に赤いライトが点灯する。


観客
「うわっ、まぶっ……!」
「何だよこれ……!」


次の瞬間、
LPSD機動隊が四方から突入。

・観客席に催涙ガス
・通路から武装隊員
・ステージ上は完全制圧


観客
「やめろ!!」
「俺は客だぞ!!」
「違う!私は関係ない!!」

だが逃げ場はない。


その時 観客席の“脱出艇システム”が作動する。


観客席の後方がガコンと開き、
座席ごとレールに乗って後方へ滑り出す。

・観客は座ったまま固定
・座席がそのまま“個人用脱出艇”にドッキング
・レールが加速し、闘技場外へ射出
・脱出艇は自動航行で散り散りに逃走。入場の際に登録した住所に向かう様だ。


観客
「ちょ、待っ――」
「うわあああああ!!」
「どこに飛ばす気だよ!!」


竹娘(心の声)
「(……観客まで“商品”みたい。)」

再会

脱出ポイントの薄暗い通路。
非常灯の赤い光が、揺れる影を長く伸ばしている。


その奥に――
耳の長い金髪ツインテールの少女が、腕を組んで立っていた。

「……よぉ、おっそいぞ、フィニ。 ……じゃなくて、今は竹娘だっけか。
 お前がルナルナ王室にコキ使われてるとこ、 見に来てやったよ。」


竹娘はその声を聞いた瞬間、足が止まった。


竹娘
「……エル……?」

その名を口にした途端、 喉が震え、胸の奥が熱くなる。

兎娘はわずかに目を細め、 竹娘の言葉を遮るように指を立てた。

兎娘 「ストップ。ここじゃ“兎娘”。」


竹娘
「……ごめん……あの時、私……あんたを置いて……」


兎娘――ネザーランド・フォン・エルザェムは、
ため息をつき、竹娘の額を軽く小突いた。


兎娘
「バカ。
 あの状況で誰が誰を助けられたってんだよ。
 お互い、生き残っただけで十分だろぅ?」


竹娘の目に涙が滲む。


クイラ
「え、知り合い同士だったのかよ? 兎団のヤツも人が悪いぜ〜。
 ま、感動の再会はルナ=クラリオンに戻ってからお願いします。」


セレグレア
「急ごう。この星、もうすぐ封鎖される。」


エルザ
「ほら、行くぞ。泣くのは帰ってからにしろ、フィ…竹娘。」

竹娘は涙を拭い、小さく頷いた。


竹娘
「……うん。
 久々に鼻水出た。
 帰ろう、エ…兎娘。」


救出艇が発進し、惑星アドレナの空を離れていく。

ブリコとローズは竹娘の手を握り、静かに目を閉じた。

アドレナ離脱 → ルナ=クラリオン帰還

救出艇の中で

ルナ=クラリオンに向かう救出艇の中。
緊張が解け、ようやく皆が座席に腰を下ろす。

太郎と司会には、全身をがっちり固定する拘束具が嵌められていた。
腕も脚も動かせず、上半身は椅子に吸い付くように固定されている。

口元には分厚いマスク状の拘束具が装着され、
外側からは一切声が漏れない構造になっていたが――

首に巻かれた金属リングが、声帯の振動だけを拾って“音声として外部に出す”仕組みになっている。

皮肉にもこのリングは、闘技場で生贄に付けられていた首輪と同じ技術が使われていた。

クイラ
「お前ら、よく頑張ったよ。もう安全圏だ。」


セレグレア
「竹娘、お前もよくやった。あの演技、プロ顔負けだったな。 女優でも食っていけるんじゃないか?」


竹娘
「えへへ……褒められると照れますなー……。ありがとうございます。 でもセリフがつくとダメなんです。大根役者でして。」


クイラ
「大根でも売れる時代だぜ?」


セレグレア
「おい、誰が大根足だ。」


クイラ
「足じゃねぇよ!!
 誰が聞いても“演技の話”だっただろ!!
 言い出したの姉御じゃねぇか!!!」


セレグレア
「……そうだったか?なら許す。」


クイラ(心の声)
「(許す基準どうなってんだよ…… 許されなかったらどうなるんだよ)」


ローズ(心の声)
「(お母さん……ありがとう。
 お母さんと、この人たちのおかげで……私、生きてるよ……)」


ブリコ
「はぁぁ……生きてる……!
 竹娘ちゃん、ほんとにすごいよ……!
 あの蹴り!雷撃!見えない斬撃!
 何より、怯えきってた私に……
 『ブリコちゃん、君のことは必ず守る(キリッ)』
 ……って、惚れちゃいそうだったよ!」


竹娘
「…私を信じて、とは言ったけど!? そんなも顔してないよ!?」


ブリコ
「してたの!私の目にはそう見えたの! で、竹娘ちゃんの恋人ってどんな人なの?
 ねぇねぇ!!」

竹娘
「えっ……こ、恋人……?」(みるみる耳まで真っ赤になる)


(カウガールビキニ姿でにじり寄るグラビアアイドルにたじたじの竹娘)


竹娘
「(すっごい迫力……色んな意味で)
 え、えっと……
 今までボーイフレンドも……
 いたことなくて……
 でも……今は気になる子は……
 いるかも……?」


ブリコ
「ウソ!? 竹娘ちゃんレベルで!?
 逆に奇跡じゃん!!

 でも“気になる人はいる”……
 って、いやぁあん、一途な恋の予感!!!

 やっぱり銀河級の戦乙女である前に 女の子 なのね。」


ローズ
「ちょ、ちょっと……落ち着いて……。
 でも……竹娘さんほどの方が仰る“気になる人”って……
 どんなお方なのか、確かに気になるわ。」


ブリコ
「でしょ!?

 恋にはね、流れってものがあるの!!
  まずは“気になる”でしょ?
  次に“目で追っちゃう”でしょ?
  その次に“距離が近いとドキドキする”でしょ!?
 で、最終的には――


 ねぇ竹娘ちゃん、初デートはどこ行くの!?
  手は繋ぐの!?
  告白はどっちから!?
  ねぇねぇ!!」


竹娘
「えっと…気になる前に
  美味しい料理を作ってもらって
  部屋に泊めてもらって
  一緒の布団で寝て……


 気になりはじめてから…一緒に
  商店街で買い物して
  映画を観て
  自動車でドライブして
  “悪党ぶってる良い人達”と戦ったの。」


ブリコ
「えっ……えっ……ええっ!?
 ちょっと待って!?それ全部“気になる前後”なの!?
 恋愛イベント全部クリアしてから“気になってる”の!?
 逆ゥゥウ!!」

(肩を掴んで揺さぶる)


ブリコ
「竹娘ちゃん、それもう恋人突入コースだよ!?
 普通は最後に行くやつ!!
 恋愛チュートリアル飛ばして本編入ってるよ!!」


ローズ(心の声)
「(すごいわ…… その殿方……どれほど信頼されているの……?)」


兎娘(エルザ)
「はぁああ!?
 “気になる前”に同じ布団で寝てんのかよ!!
 チャンバラとか虫取りばっかしてたお前が バグった恋バナしてる……」


竹娘
「む!? お互い10歳までしか知らないんだから黙ってて!!」


エルザ
「“恋よりカブトムシ”だった女にツッコミいるのは当然だろ。」


竹娘
「聞き捨てならんな。 キミ、カブトムシとクワガタムシの違いも分からないのかな?」


エルザ(心の声)
「(あ、クワガタ派だっけ……お前、そーゆーのは譲らねぇよな。)」


ブリコ
「ねぇ竹娘ちゃん、肝心の“気になる人”のこと、まだ聞いてないなぁ?
 どんな人なの!?優しい?強い?かっこいい?
 それとも……」

竹娘は両手を頬に当て、なぜか“語りモード”に入った。


竹娘
「誕生日7月7日。
 身長は……目測で158センチくらい。
 体重は……抱えた時の“ふわっ”とした感じで47キロくらい。
 13歳で、優しすぎて心配になる子で……
 でも一緒にいると救われるのは私の方なんだよね〜……

 そしてーーー言葉にできないくらい美味しい料理を作るの」


ブリコ
「キャーーッ!!ファーッ!?年下くんなんだ!?///
 え!?ちょ、ちょっと待って!?
 “抱えた時”って何!?
 竹娘ちゃん王子さまなの!?
 守ってあげたい系男子を逆に守る系女子!?
 ギャップ萌えすぎるんだけど!!」


竹娘
「…やっぱり 今までの全部
 嘘、ということにしていただいて良いですか?」


ローズ
「(かわいい……とてもかわいい)」


クイラ(小声)
「姉御も混ざってくれば?」


セレグレア
「あんな若人らの甘酸っぱい会話に入れる訳ないだろ!
 こちとら、とっくに既婚者だぞ!」


クイラ
「結婚前にいくらでもあっただろ、その手のネタ。
 例えば旦那さんが大学受験に落ちた時ーー」


セレグレア
「……(無言の圧)」


クイラ
「すいませんした。」


太郎
「おい貴様ら、こんなことしてタダで済むと思うなよ。俺を誰だと思ってるんだ!!!」


竹娘
「ん?
 鷹栖太郎になりすましてる偽ルナルナ国民さんですよね?……ウルク・ニマンさん?」


太郎
「!?」


クイラ
「いや空気読めよおっさん。 この流れでそのセリフは反則だろ🤣」


ブリコ
「あなた大っ嫌い!!!
 さっきまでピーチクパーチクうるさかった司会さんみたいに、
 黙ってそこで縮こまってて!!!」


司会(リン)
「わ、私の名前はリン、リン・カサン!
 本名よ!!!
 ごめんなさいブリコさん、ローズさん!
 今までのは ただの 仕事だったの!
 そこのゲス野郎に脅されて仕方なく……!」

(ブリコとローズ、露骨に嫌悪)


ブリコ
「嘘!!!
 あんなに酷い言葉の数々、
 “仕方なく”だったら出てくるはずない!!!」


ローズ(心の声)
「(……お母さんの死を……あんなふうに……)」

(ローズ、悔しさと痛みで目に涙を浮かべる)


リン
「ごめんなさい!ごめんなさい!
 でもショーの映像、生体兵器と違法コピー化粧品で
 カネ儲けしてるそこのクソゲス野郎よりマシでしょう!?」


太郎
「貴様……誰に向かって……」


リン
「五月蝿い!この特権階級気取りの背乗りクソゲロカスゲス野郎!
 お前はもう終わりよ! ……私もだけど。」


――救出艇の空気が、一瞬だけ静まった。


太郎
「……お……あう……あ……あが!!!?」


兎娘
「何 その沈黙の破り方」


太郎の顔の半分が“ペリッ”と剥がれ落ち、複眼が覗きはじめる。


ブリコ
「ひっ……!? なにこれ!? さっきのカマキリ人間と同じ!?」


竹娘(心の声)
「(ん~、、、キリギリス亜目……その中でもコオロギ科に似てるかも)」


セレグレア
「……んー、こりゃ自分で変身してるんじゃねぇな。 “誰か”の口封じだな。」


太郎
「うぎゃあああああああ!!!」


リン
「やったー、くたばれーーー!!!」


――しかし変化は途中で破綻し、
太郎の身体は粉末状の微粒子へと散った。


「んごおおおおおおっ!」
――ドパァンッ。


全員
「…………」


竹娘
「……結局 何だったんだろ、この人。」


兎娘
「フン、どーせロクなヤツじゃねーよ。
 粉末に……なっちゃうんだから。」


全員(心の声)
「(すげー雑にまとめた……)」

エルザ
「……うへぇ、汚ねー……とりあえずまとめとくわ…… 掃除係じゃねぇんだけどな……」


兎娘(エルザ)は震える手で、粉末の漂う空間にそっと手をかざす。

(神通力:ミストコレクター系 発動)


大気中の電界(Electric Field)と、兎娘自身が持つ微弱な静電気(Bio-Electrostatic)が共鳴し、
微粒子化した太郎の遺体が“吸い寄せられるように”一点へ集束していく。


ブリコ
「わぁ……なんか…… “高性能掃除機”みたい……」


エルザ
「どちらかというと……集塵機?」


やがて、黒光りするサッカーボール大の球が出来上がった。


竹娘
「……フンコロガシみたいだね。」


エルザ
「やめろ!!片付けてやったのに何て言い草だ!」


リン
「やったー! 今日から私は自由よ!!! ……この後 牢獄生活だろうけど。」


竹娘
「司法取引できる情報をお持ちではありませんか?
 証人保護プログラムで別人として暮らせる道があるかもしれません。」


リン
「あるわよ!?
 山ほどあるわよ!?
 むしろ吐かせて!?
 今なら何でも喋るわよ!!!」


ブリコ
「竹娘ちゃん優しい!
 リンさんは…打首獄門にならないだけ
 ありがたく思え…っ!!!」


ローズ(心の声)
「(この方達……すごい世界で仕事してるのね……)」

天宮城でオヤスミナサイ

救出作戦を終えた一行は、天宮城の居住区へ案内された。
長い戦闘と脱出の疲労が、ようやく身体にのしかかってくる。


「まずはフィ……竹娘の汗のニオイを落とさなきゃな。」
兎娘が腕を組んで言う。


「素直に“風呂入りたい”って言えんのか!」
竹娘が即座にツッコむ。


「竹娘ちゃんは臭くないよ!
 これは“助けに来てくれた匂い”なんだから!」
ブリコの謎擁護で、会話の方向が行方不明になる。


そんなやり取りをしながら、一行はそのまま浴場へ向かった。


天宮城の浴場は、男女で区切られていない“軍用仕様”の大浴場だった。
広い洗い場に湯気が立ちこめ、湯船は湖のように広い。


「……なんで全員で一斉に入るんだよ……」
クイラがぼそりと呟き、落ち着かない様子で身体を洗い始めた。


セレグレアとブリコは、割り切りっているらしく堂々と洗い場に立ち
他の女性陣はタオルやバスローブで普通に入浴している。

ブリコはクイラをちらりと見て、にこっと笑った。

ブリコ 「クイラさんは変なことしないでしょ?  だから大丈夫だよ〜。」

クイラは一瞬固まり―― 次の瞬間、その場で腕立て伏せを始めた。
床がわずかに揺れるほどの勢いで、 秒速3回は超えている

クイラ
「い、いや……!
 あんまり大人をからかうんじゃないぞ……!
 ……湯気が熱いなぁ!!?」

セレグレア
「……みんな放っておいてくれ。コイツしばらく止まんねぇわ。」


竹娘・兎娘・ローズの三人は、湯気の向こうでブリコの身体を見て思わず目を丸くした。


「少年紙の巻頭グラビアそのまま……」
竹娘がぽつりと呟く。


「う、うぉおおおお。」
兎娘は言葉にならない声を漏らし、

「……すごい迫力……」
ローズは素直に驚嘆した。

「えへへ、サービスショットだよ〜」
ブリコはピースしながら肩まで湯に沈んだ。


クイラは耐えきれず、
「お、お先に失礼!」
と逃げるように退散していった。

拘束具をつけられたままの司会リンは、医療スタッフによりシャワーで丁寧に洗浄されていた。
「ちょっと、少しは優しくしなさいよ!!!」
リンの抗議が湯気に吸い込まれていく。


入浴後、それぞれの部屋へ向かう。


クイラは拘束された司会リンを連れて自室へ戻る。

「せっかくだから色々話そうぜ?バラエティ番組の裏話とかさ!」
「やめてよ〜!怖いことしないでよ〜!」
「しねぇよ!話聞くだけだって!」

軽口と悲鳴が廊下に消えていく。


セレグレアは無言で射撃場へ向かった。
「……まだ撃ち足りない。」その背中はいつも通りだった。


ブリコとローズは、竹娘と兎娘の二人部屋へ案内される。

「乳デカアイドル、お前は床で寝ろ。」

兎娘が当然のように言う。

「ひどい〜!じゃあ竹娘ちゃんと一緒に寝るもん!」
ブリコはぷりぷりしながら竹娘のベッドを覗き込む。


竹娘は苦笑しながら言った。
「……まあ、好きにしていいよ。しりとりでもする?」


ローズは控えめに手を挙げた。
「あの……兎娘さん、私……」
兎娘は一瞬だけ目をそらし、
「……じゃあ、ローズさんも私のベッドでいい。」
と小さく呟いた。


竹娘はその様子を見て、
(……相変わらずだな)
と心の中で微笑んだ。


灯りが落ち、静かな夜が訪れる。

竹娘の隣では、寝相の悪いブリコがいつの間にか寄ってきて、
竹娘に抱きついて寝息を立てていた。
「……寝相悪いなぁ……」

竹娘は天井を見つめながら、ふと笑った。

「そういえば……出会ったあの日、種ピーと……」


あの夜のことを思い出す。
部屋着を勝手に借りて、機材を広げ、唐突にしりとりを始め、
そして――
種男の布団に平気で潜り込み、抱きついて寝た自分。

「……あれ、今考えると……めちゃくちゃ迷惑だったよね……」

今さらながら、気まずさと申し訳なさが胸に広がる。


明日は王室会議。
LPSDとの合同会議を控えた、嵐の前の静けさ。


だが今だけは、救われた命たちの安らかな寝息が、天宮城の夜を優しく満たしていた。

After BoB

勝って兜の緒を締めよ:LPSD合同会議前 事前打合せ

白銀歴1204年12月6日(土)
惑星ルナ=クラリオン 星都独立領ルナルナ
王室移動要塞・天宮城執務室――「創天の間」

「星都独立領ルナルナ」三衛王室――
儀務閣《白イ三日月》、警務庁《赤イ兎》、密衛庁《青イ竹》の代表者たちが静かに席へ着いた。


参加者

◆ 儀務閣《白イ三日月》

  • 天峰 篁(国王)
  • 天峰 笹真貴(王妃)
  • 隠岐永 公衡(庶務)
  • 月京 竹娘(近衛騎士)
  • 餅月 兎娘(近衛騎士)

◆ 警務庁《赤イ兎》

  • 兎団 将萌(総司令)
  • リオ・ハティー(参謀)

◆ 密衛庁《青イ竹》

  • ゼルギウス・ユア(長官)
  • 布瀬 弥羽(副官)
  • 竹然(オペレーター)
  • ミスティ・サブラ(オペレーター)

三衛の視線が交差するたび、 室内の空気がわずかに震えるようだった。

そして、
この会議の数日後には、
“上層部が腐敗した警察機構「ルナルナ公共安全総局(Lunarna Public Safety Directorate 通称:LPSD)」との合同会議が控えていた。

そこにはウラガネビトが潜んでいる。今日の議題は、その前哨戦でもあった。


《白イ三日月》国王・天峰篁は、ゆっくりと立ち上がった。

「作戦は成功だ。みんな、本当にありがとう。」


その声は穏やかだが、背後にある緊張と覚悟を隠しきれない。

「今回の作戦で、我々王室と警察機構が回収・保護した対象を確認し、私の考えを述べる。
忌憚のない意見をお願いしたい。」

公衡が資料を広げる。


王室が回収・保護したもの

 ① ブリコ・モニトゥ、ローズ・マリガンの二名

 ② コオロギ太郎ボール(竹娘命名)、司会リン・カサンの身柄

 ③ ベスティアリウム製 生体兵器・違法コピー品の開発計画一式

 ④ ベスティアリウム製品の顧客名簿

 ⑤ 闘技場“ショー”の記録映像(過去10年分)

 ⑥ 闘技場の観客名簿

 ⑦ 闘技場観客の個人情報・アンケート結果(作戦当日分)


LPSDが回収・保護したもの

 上記 ③~⑦
 ⑧ 身元不明扱いの遺体(リディア・マリガン)
 ⑨ 国際養子縁組で国外からルナルナに渡った幼児21名

篁王は静かに言った。

「①と②は、当面“我々の間だけの秘密”としたい。
 ③~⑦も、我々は“回収していない”“知らない”という扱いだ。」


そして続ける。

「正確には――
 ①は 彼女らの意思を尊重し、帰国かルナルナでの保護を選んでいただく。
 ②は 解析と尋問で情報を得る。

 そして③~⑦ は今後想定される“ウラガネからの干渉・攻撃”への備えとして扱う。
 また、
 各国との交渉の場で“こちらが握っている情報の重さ”を示すための
 外交カードにもなる。

 
 いずれも、我々が不利な立場に追い込まれぬための“盾”であり、
 時に“矛”にもなる。」

更に竹娘に視線を送りながら
「③~⑦の情報は……ここの皆は好きに調べてもらって構わない。
 ただし閲覧はこの天宮城の中だけ、持ち出しは禁止とする。」

竹娘(心の声)
「……篁さん。
 もしかして――
 “パパの死に繋がる情報があるなら、調べていい”
 そう言ってくれているの……?」


竹娘は一瞬だけ目を伏せ、 すぐに表情を整えて口を開いた。

「つまり私たちは、
 “私が LSPD機動隊突入までの時間稼ぎ をしただけ”
 ということにするのですね。」


篁は頷く。


竹娘は続けた。

「意図は……
 各国に潜むウラガネ、そしてLPSD内部のウラガネビト
 あえて“隠蔽を起こさせ”、その流れを記録する……といったところですか?」

王と王妃は顔を見合わせ、苦い表情でうなずいた。


王妃・笹真貴が答える。

「その通りよ、竹娘さん。
 国家の枠を超えた人身売買を追えば、我が国は必ず国内外のウラガネから攻撃を受ける。」


王妃の瞳が竹娘を見つめる。

「あなた自身、宇宙海賊時代に経験したでしょう?正義や事実を突きつけるだけでは守れないものがあると。」


竹娘は静かに目を伏せた。


王妃は続ける。

「だからこそ、“防衛の準備”と“武器の用意”が必要なの。」


LPSDが保護した対象について

王妃は資料をめくり、淡々と告げた。

「⑧リディアさんのご遺体は、LPSDに身元開示を依頼の上、アルビオニア王国の外務省返還を目的に動きます。」

「⑨幼児21名は 養親の正体を《青イ竹》にて調査済でした。1名の養父だけクロです。
 20名は養親へ返還し、1名は天宮城で保護しましょう。」


その瞬間、警務庁《赤イ兎》総司令・兎団が挙手する。

「両陛下のご意見に同意します。」


普段は冷徹な彼女の声が震えていた。

「21名の幼児……必ずウラガネの手に戻らぬよう、我々が守り抜きます。」

その怒りと熱意は、会議室の空気を震わせた。

やるせなさそうに兎娘が口を開く。

「ローズの母ちゃん、具体方策はあるのかよ。
 LPSDのヤツら、身元解明できず……ってことにするだろ、絶対。」

密衛庁《青イ竹》副官・布瀬は静かに資料を閉じ、 兎娘の方へ視線だけを向けた。
「……その可能性は高いです。
 LPSD上層部は“身元不明”として処理することで、ウラガネとの癒着を守れる。」
「ですが――
 遺体がリディアさん本人であると“公式に認めさせるための証拠”は、
 すでに複数確保
しています。
 医療データ、義歯の製造番号、そして現場から回収した私物。
 どれも、LPSDが否定できる類のものではありません。」
「さらに――
 遺骨をローズさんへ届ける“道筋”も確保済みです。
 搬送ルートの途中で遺骨を確保する手筈になっています。」

密衛庁《青イ竹》長官・ゼルギウスが軽く頷き、会議全体へ向けて声を落とした。

「LPSDへの根回しと監視は、我々の“エージェント”に任せましょう。」

「LPSD御用達の密偵・情報屋にもすでに成りすましております。」

「作戦案は、先ほど皆様へ送信した通りです。 ご意見・ご要望がございましたら今日明日中に。」

その声は冷静で、しかし底知れぬ鋭さを帯びていた。

篁王は深く息を吸い、会議室を見渡した。

「……明後日月曜日、
 腐敗したLPSDの上層部と“本件の顛末を確認する合同会議”がある。」


「そこで何が起きるかは分からない。
 だが――
 我々は必ず、真実を守る。」


創天の間に、静かな決意が満ちていった。

LPSD合同会議


白銀歴1204年12月8日(月)
惑星ルナ=クラリオン 星都独立領ルナルナ
公共安全総局本庁舎〈セイフガード・タワー〉――「第零会議室〈ゼロ・ルーム〉」

ルナルナの警察機構、公共安全総局――通称《LPSD》。
その深淵に位置する“第零会議室”は、
存在するのかどうかすら噂される、極秘会議専用の部屋だった。

壁一面に並ぶ監視モニターは無音で光り、
冷たい白色照明が参加者の影を鋭く切り取っている。
空気は張り詰め、息をする音すら憚られた。


参加者


ルナルナ三衛王室

  • 天峰 篁(儀務閣《白イ三日月》国王)
  • 月京 竹娘(儀務閣《白イ三日月》近衛騎士)
  • 兎団 将萌(警務庁《赤イ兎》総司令)

ルナルナ公共安全総局《LPSD》

  • 黒院 斗真:こくいん とうま(総監)
  • 白波 澄臣:しらなみ すみおみ(副総監)
  • 灰堂 鷹理:はいどう おうり(公安部長)
  • 霜月 直規:しもつき なおのり(刑事部長)
  • 淡海 由紀:あわみ ゆき(生活安全部長/組織犯罪対策部長 兼務)
  • 隆宗 アンナ:たかむね あんな(公安部 警部補)

議題

  • ベスティアリウム事件の経緯把握
  • 保護した幼児21名の対応
  • 身元不明扱いの遺体の扱い
  • 質疑応答

会議

重厚な扉が静かに閉じられた瞬間、会議室の空気がさらに冷たく沈んだ。


黒院総監は彫像のように微動だにせず落ち着きつつ、その眼光だけが異様な鋭さを放っている。
副総監・白波澄臣は柔らかな笑みを浮かべているが、その瞳の奥は氷のように冷たい。
公安部長・灰堂鷹理は腕を組み、竹娘を値踏みするように見つめていた。
刑事部長・霜月直規は落ち着かない様子で視線を泳がせ、
生活安全部長・淡海由紀は静かに資料を閉じて深く息をつく。


そして――
会議室の中央に座すは司会進行役、公安部 警部補・隆宗アンナ。

24歳の若さでこの場に立つ異例の存在。
そして彼女は、LPSD機動隊突入前――
クイラ・セレグレア・竹娘の作戦中、LPSD唯一ベスティアリウムへ潜入していた
公安特別監視官《隠密》でもある。


アンナ
「……それでは、ルナルナ王室と公共安全総局による合同会議を開始いたします。」

その声は澄んでいるが、わずかな震えが混じっていた。


竹娘は気づく。
アンナの視線が、一瞬だけ自分に向けられたことに。
(……この人……何かを知っている?)

議題:1/4


会議室の空気が、静かに締め上げられていく。アンナは資料を整え、淡々と議題を読み上げる。

「まず、ベスティアリウム事件の経緯について、双方の認識を確認します。」


ルナルナ王室とLPSDは、以下の流れを再確認した。

  • 王室からLPSDへ、幼児21名誘拐の通報と協力依頼
  • 竹娘がLPSD機動隊突入までの時間稼ぎを担当
  • 機動隊の成果
    幼児21名の確保:成功
    支配人「鷹栖太郎」、闘技場司会「リン・カサン」確保:失敗
  • 副次効果として、
    「ベスティアリウム製 生体兵器・違法コピー兵器の開発計画一式」など多数の資料を押収

――あくまで事件の建前は「幼児21名誘拐事件」なのである。

アンナの声は冷静だったが、その内側では、彼女の価値観を揺るがす“独白”が渦巻いていた。

(……巨漢の大男。ぽっちゃりした女性。あの二人は……この世のものとは思えなかった。)

(総監より……遥かに上。あんな動きをする人間、私は見たことがない。)

(月京 竹娘さん……。押収した映像でしか見ていないけれど……
 ブタニク戦も、クモ女戦も……あれは“総監と同格”の動きだった。)
(総監より強い存在がいる……そんなこと、考えたこともなかった。)

(……だから私は、LPSD内部の誰にも報告できなかった。内部に“裏切り者”がいるのだから。)
(総監…… 私は、あなたを信じています……)

議題:2/4、3/4


続く「幼児21名の対応」と「身元不明遺体の扱い」について、
生活安全部長・淡海、刑事部長・霜月から報告がなされた。

  • 幼児21名:全員を養親へ返還
  • 遺体:ルナルナ王室から提供された情報および歯科インプラントの製造番号から身元は
    「アルビオニア国籍:リディア・マリガン」と特定
    王室からアルビオニア外務省へ連絡を取るべきとの提案


ここで国王・篁が、養父の一人の罪を提示した。

非営利団体「赤ちゃんライフ」代表:フローレン・裕紀。
補助金で幼児を養子に受け入れ、ベスティアリウムへ高額転売していたのだ。


淡海は事実確認を約束し、もしフローレンがクロであれば、その幼児は王宮で保護できないかと逆に提案した。
篁はこれに即座に合意。


ルナルナ側三名は、LPSDと各国のウラガネとの繋がりを警戒しつつも、
ここまでは驚くほど順調に合意が進み、拍子抜けすら覚えた。


アンナ
「では、最後に質疑応答の時間に移ります。」

――この質疑応答こそが本題。この場にいる全員が、それを理解していた。

議題:4/4


公安部長・灰堂鷹理が、わざとらしく咳払いをし口を開く。

「……では、まず私から良いですかな。王室の“独断行動”について。」
その声は、挑発を隠す気すらない。

「LPSD機動隊の作戦区域を勝手に荒らし、挙げ句の果てに半壊させている。 ――これは、どう説明されますかな?」


兎団は全く表情を変えず答える。
「はて?月京は事前打合せ通り“闘技場”で時間稼ぎをしたに過ぎませんが。」


灰堂の口元が歪む。
「他に潜入した者がいたのではないですか? 鷹栖が居た観客席VIPルームまでの道にあった無数の魔物の遺体、そして設備各所の破壊痕。
 闘技場に居た月京さんには、どれも不可能な行いです。」


兎団は、まるで退屈な質問を聞かされたかのように、肩をすくめた。
「“不可能”ですか。では――」

兎団は灰堂を真っ直ぐに見据える。
「その“破壊痕”は、LPSD機動隊の突入ルートと一致しておりましたか?」


灰堂
「……な!?」


兎団
「LPSD機動隊の突入ルートは、私たちには一切知らされておりませんでしたね。
 当然です。機密ですから。」


兎団は淡々と続ける。
「ですが、VIPルームまでの経路に残っていた破壊痕が、機動隊の突入ルートと一致していないなら――」

「“LPSD内部の誰かが、別ルートで動いていた”可能性はございませんか?」


灰堂の表情が固まる。


兎団
「あなた方の内部事情なんて存じませんが、それらを“王室の仕業”と言われましても。」

兎団は机に肘をつき、わざとらしく軽いため息をついた。
「LPSD内部に、機動隊とは別に勝手に動く連中がいる、そう自白されている様に聞こえますが?」


灰堂
「な……っ!」


兎団はさらに追撃する。
「私たち王室側は、“月京が時間稼ぎをした”以外の行動はしておりません。
 そして彼女は小型救出艇で惑星アドレナを離脱。これは事前に共有した通りです。」


アンナの心臓が跳ねた。
(……兎団総司令……
 “事実”を言っていない……
 でも、論理では完全に勝っている……
 あの救出艇の収容人数は…確か10人。それ以下の人数で出来る仕事じゃない。
 ……あんな人たちでなければ。)


兎団
「それ以上の“破壊”があると仰るなら――
 それは現場を封鎖・調査している“あなた方の課題・問題”ではございませんか?」


灰堂は言葉を失い、黒院の方を見た。


黒院は目を閉じ、静かに言った。
「……この件は、後ほど内部で引き続き精査する。兎団総司令の責任ではない。」


灰堂
「総監……!」


黒院
「そこまでだ。」


その一言で、灰堂は口を閉ざした。


アンナは震えた。
(……総監……あなたも兎団総司令が正しいと……?)

だが、黒院の真意はアンナにはまだ分からない。

その時――


竹娘が、静かに口を開いた。
「……あの、私も質問してもよろしいでしょうか。」


黒院
「……何かな、近衛騎士殿。」


竹娘は資料を閉じ、まっすぐ三人の部長を見据えた。

竹娘
「差し支えない範囲で開示いただきたいのですが――
 今回の作戦前、LPSDはベスティアリウムの“闇取引”を
 どこまで把握されていたのでしょうか?」


会議室が静まり返る。


竹娘
「魔物の密輸。
 人身売買。
 違法兵器の製造。
 闘技場の運営。
 ……いずれも、生活安全部と公安部の管轄ですよね。」

淡海部長が息を呑む。

竹娘
「今回の幼児救出を“きっかけ”に、
 これらの押収も“元々予定されていた”……
 その可能性は、ございませんか?」


霜月部長が目を伏せ、
淡海部長は苦い顔をした。

会議室の空気が、ついに限界まで張り詰めた。


アンナは震えた。
(……月京さん……そこに触れるのは……)


竹娘は、さらに一歩だけ踏み込む。

「もちろん、私の勘違いであれば良いのですが。
 あれほど大規模な闇取引が“完全にノーマーク”だった、
 ……とは、少々考えにくいもので。」

淡海部長は、喉を鳴らしながら苦い顔で口を開いた。

淡海部長(生活安全部)
「……生活安全部としても、
 “噂レベル”の情報は、以前から複数受け取っていました。
 しかし、いずれも裏付けが取れず……
 捜査着手には至らなかった、というのが実情です。」

言い訳に聞こえないよう、しかし核心には触れない絶妙な距離感。

続いて、霜月部長が静かに眼鏡を押し上げた。

霜月部長(情報分析部)
「情報分析部としては、
 “異常な資金流動”の兆候は把握していました。
 ただし、それがベスティアリウムに直結する確証はなく……
 上層部への正式な報告には至っておりません。」


霜月の声は淡々としているが、その指先はわずかに震えていた。

公安部長・灰堂の眉がぴくりと跳ねる。
「……近衛騎士殿。
 申し訳ないが機密情報だ。背後に潜む者たちへの捜査を続ける以上、お答えできない。」


竹娘は深く頭を下げた。

「至極ごもっともなお考えです。大変失礼いたしました。」

だがその声音には、 “あなたたちは本当に何も知らなかったのですか?” という、わずかな棘が残っていた。


竹娘の鋭い問いが空気を切り裂いたまま、会議室は沈黙に沈んでいた。


その沈黙を破ったのは――
副総監・白波澄臣だった。


白波
「……いやいや。近衛騎士殿のご懸念は、もっともです。」


柔らかな笑み。だがその瞳は、氷のように冷たく見える。


白波
「今回の件で、我々LPSDも多くを学びました。
 闇取引の実態、各国の政財界や犯罪者との繋がり……
 これらは、今後の協力体制を強化する上で、
 避けて通れぬ課題です。」


淡海部長が小さく頷く。
霜月部長も、ほっとしたように息をついた。


白波
「どうか誤解なさらず。
 我々は王室と敵対するつもりなど毛頭ありません。
 むしろ――」

白波は穏やかに微笑む。

「今回の救出劇は、王室とLPSDが
 “手を取り合えば何ができるか”を示した好例でしょう。」


兎団は眉をひそめたが、国王・篁は礼儀として軽く頷いた。


そこへ、黒院総監がゆっくりと立ち上がる。

「……副総監の言う通りだ。」

その声は、先ほどの冷徹さとは別人のように柔らかい。

「王室の皆様。
 今回の件では、我々も多くの反省点を抱えました。
 しかし――」

黒院は竹娘、兎団、篁を順に見渡す。

「これからも、ルナルナの治安と市民の安全のために、互いに協力していければと願っております。」

その言葉は、まるで“誠実な国家官僚”のように聞こえた。


竹娘は静かに頭を下げる。

「……こちらこそ、よろしくお願いいたします。」


兎団も礼儀として軽く会釈した。


黒院
「本日の会議は、これにて終了といたします。皆様、どうかお気をつけてお帰りください。」


重い扉が開き、緊張に満ちた会議は――表向きは和やかに、穏やかに幕を閉じた。

閉会後


第零会議室の重い扉が閉じ、
王室側三名が廊下へ出たところで――

「……兎団総司令。」

控えめな声が背後から届いた。


振り返ると、公安部 警部補・隆宗アンナが立っていた。
会議中とは違い、どこかほっとしたような、しかし不安を押し隠した表情だった。


兎団
「……隆宗警部補。どうされましたか。」


アンナは深く頭を下げた。

「先ほどは……うまく切り抜けられましたね。」

小さく笑ったその顔は、どこか寂しげだった。

「……まぁ。
 たった二人の男女が、わずか半刻ほどで
 あれだけの魔物を、あれだけの設備を、
 まるで紙を破るように破壊し尽くした――
 そう言っても、こちら側は誰も信じなかったでしょうけど。」

兎団(心の声)
(……揺さぶりか? いや……違う。こいつは“見たまま”を言っている。)

竹娘(心の声)
(この雰囲気……LPSD内部には共有してないよね。)

篁(心の声)
(内部に“信じてはいけない者”がいる……そういうことなのかい?)

三人には、アンナの声が“真実を抱えたまま孤独に立つ者”のそれに聞こえた。


アンナは深く息を吸い、無理に笑顔を作った。

「どうか……お気をつけて。総司令も、月京さんも、国王陛下も。」


兎団
「えぇ。あなたも……。」


アンナ
「はい。……また、協力できる日が来るといいですね。」


そう言って頭を下げたアンナの背中は、どこか儚く、消えてしまいそうに見えた。


兎団はその背中を見送りながら、胸の奥に小さな違和感を覚えた。

――その違和感が、
後に“最悪の形”で現実になることを、兎団はまだ知らない。

エピローグ

ベスティアリウム事件の余波は、ルナルナのみならず、各国にも静かに広がっていく。
救出された幼児たちの保護が進む一方で、押収された膨大なデータの解析が始まり、
事件の“本当の姿”が少しずつ明らかになっていく。


太郎の正体――ウルク・ニマン

押収データとルルデスレポートを照合した結果、
“鷹栖太郎”という人物は、すでに何年も前に存在していなかったことが判明した。


鳳栄コスメティクスは、伏原財団の外郭団体を通じて
「美容医療研究費」「国際養子支援金」「臨床試験補助金」など、
様々な名目で莫大なルナルナ国費を受け取っていた。


その資金の一部は、少惑星アドレナにある“私邸”――
ベスティアリウムの研究施設へと流れ込んでいた。


そして、その仕組みを作り上げたのは伏原家の人間ではない。

鷹栖太郎に成り替わっていた男、ウルク・ニマン。


各国のウラガネと繋がりながら、
闇の研究ネットワークを構築していた張本人だった。

事件は、単なる誘拐事件ではなかった。
国家規模の資金流用と、複数の星系を跨ぐ巨大な闇の一端だった。


兎娘の回収データ → 竹娘の調査

  • ベスティアリウム製 生体兵器・違法コピー品の開発計画一式と顧客名簿
  • 闘技場“ショー”の記録映像、観客名簿、アンケート結果(作戦当日分)


…兎娘が回収した膨大なデータをもとに、 竹娘は“惑星トト”との資金・情報のやり取りをリストアップしていった。

それは、彼女自身の目的―― 父の死に関わる情報を探るためでもあった。

一方で兎娘は、 トトのことを思い出したくない様子で、 調査には距離を置いていた。

そんな中、竹娘は一通のメールに目を止める。 差出人不明、宛先はウルク・ニマン。 そこには、こう記されていた。

白銀歴1199年:ショーで解体予定 「■■■(黒塗りで消されている)計画」立案者の生き残り、 ブリジット・エビルゲイツ


かつて父の同僚であり、 惑星トトからの脱出船に同乗した人物。

彼女はベスティアリウム送りの候補だったことが判明したが、 その後の処遇は変更されていた。

コムニア星州連邦司法省管轄―― 監獄衛星カルケリオン=オルビタ。 無期限の幽閉。

竹娘は静かに息を吸った。

(どうにかして、ブリジットさんと会って自由にしてあげないと。  盗聴も盗撮もできない“安全な場”で……)

そして、ふと一つの方法を思いつく。

(……そうだ。  コムニア大統領との会談に同行する時に――)


司会リン・カサンの尋問

リン・カサンは、尋問が始まるや否や、次から次へと白状した。


その供述は、ルルデスレポートや青イ竹の調査では追いきれなかった“穴”を埋めていく。


そして、ローズをベスティアリウムに送った黒幕も判明する。

アルビオニア王国 国王手許金会計長官 アーチボルド・レジナルド・ブラックウェル。

しかし、送った理由までは定かではない。


ローズ名義で大学の休学届まで出していた徹底ぶりを見せる一方で、
ローズの“死”を確認しようとはしていなかった。
その矛盾が、かえって不気味さを際立たせた。


リン・カサンは司法取引が認められ、証人保護プログラムの対象となった。

本体は天宮城内のカプセルに移され、町では“別人の姿のアバター(義体)”として暮らすことになる。

リン・カサン
「目指せインフルエンサー♪」


事件の闇は深かったが、その闇を暴いた者たちの未来は、少しだけ明るくなった。


ブリコとローズが加わった“しばらくの生活”

救出されたブリコとローズは、
しばらく天宮城で難民として保護されることになった。

王が趣味と実益を兼ねて運営している天宮城内の農場プラントで、二人は野菜作りを手伝うことに。


ブリコ
「よーし、太くて硬いキュウリとナスビ、作っちゃうよ〜!」


ローズ
「やだ……その言い方……」


兎娘
「??? ついでに長くしようぜ!」


竹娘
「///(ローズの意図は分かるが言わない)」


二人の未来はまだ不安定だが、確かに“前へ進もうとしている”。


ブリコは
「いつかルーシアに戻りたい。でも今は怖いから、ルナルナでアイドルになる!」と笑い、


ローズは
「事件が公表されたら……大学、復学したいな」と静かに呟いた。


天宮城の空は、事件前よりも少しだけ明るく見えた。

attle of esitiarium」完

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