本章ノ壱 四節「京都星海楼へ行こう」(作成中)
――海が、空を越え、星になる。
京都に誕生した、惑星テラ=プレアデス初の星海楼。
頭上を泳ぐマンタ、光の粒が舞う「海の天蓋」。
宇宙を泳ぐような水族館「星海の回廊」。
星が映る水面を駆ける「天海ドーム」。
そして――星が降り注ぐ「星の大聖堂」。
海と空と星が、ひとつになる場所。
京都星海楼。 あなたの“初めて”が、ここにある。
12月24日(水)、オープン。
「京都星海楼 公式CMナレーション」よりー
─────────────────────
本章ノ壱 昔醒の兆し 編
四節 京都星海楼へ行こう
──────────────────────
あああ
白銀歴1204年12月13日(土) 11:45
惑星テラ=プレアデス テラ連合圏 島国ヒモノト 京都府
料理店《なよ竹》
店内に流れるテレビから、「京都星海楼 公式CM」の煌びやかな映像が流れている。
光の粒が画面いっぱいに舞い、巨大な海上リゾートが姿を現す。
その瞬間――
「くはぁぁぁぁぁぁぁぁーーー!!行きてぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
マロがテーブルに突っ伏しながら絶叫した。
店内の常連客が「またか…」と言わんばかりにちらりと振り返る。
「チケット取れなさすぎだるぅお!!」
携帯端末の画面には“抽選落選”の文字がびっしりと並んでいる。
桜司はストローを噛みながら、まるで“この世のすべてを達観した者”のような顔で言った。
「どーせ水着の女の子をウォッチしたいだけだろー。
ニュース映像に出てくるだろうから、それで我慢しとけー?」
「違いますぅぅぅ!!ぼくは純粋に古代鮫を見たくて……!!」
マロは涙目で反論するが、誰も信じていない。(常連客の視線も「はいはい」みたいな空気)
そんな中、
種男はテレビの星海楼CMを見つめながら、ふと数日前の出来事を思い出していた。
夕方のなよ竹。
店の裏口に、鬼乃子が深々と頭を下げていた。
「この前は……私たちのボスがごめんなさい。
自動車修理費用はすべて負担いたしました。
そして、お詫びとは何ですが――」
鬼乃子は封筒を差し出した。
「12月24日にオープンする星海楼の優待入場・宿泊券5枚です。私たちの製品、あの施設に多数使われているんですよ。」
種男は思わず固まった。
(……これ……みんなで行ける……
どうしよう……いや、誘うしかないよね……!)
鬼乃子は微笑んだ。
「どうか、楽しんできてくださいね。」
種男は深呼吸し、テーブルに封筒を置いた。
「……実はさ。
チケット持ってて、みんなで行かない?
入場も宿泊も、全部セットの優待券。」
一瞬、時間が止まった。
次の瞬間――
「うわああああああああああああああああああああ!!!」
マロが椅子から転げ落ち、床に突っ伏して号泣した。
「うそ……夢……?夢ですか……!?
ぼく……ぼく……星海楼に……!?
うわあああああああああああああああああ!!」
鼻水と涙で顔がぐしゃぐしゃだ。
種男がそっとティッシュ箱を差し出す。
マロはその手首を両手で掴み、震える声で言った。
「種男さん……裏ボスっ!
俺……一生ついていきます……!!」
「じゃあ……貸し一つ、だね!」
種男はそっと携帯端末を見た。
昨日誘った竹娘からの返信メッセージは――まだ来ていない。
(……返事、来るといいな)
軽い不安と、星海楼への期待が胸に広がっていった。
種男は思わず固まった。
(……これ……みんなで行ける…… どうしよう……いや、誘うしかないよね……!)
種男は深呼吸し、 テーブルに封筒を置いた。
「……実はさ。 チケット持ってて、みんなで行かない? 入場も宿泊も、全部セットの優待券。」
一瞬、時間が止まった。
次の瞬間――
「うわああああああああああああああああ!!!」
マロが椅子から転げ落ち、 床に突っ伏して号泣した。
「うそ……夢……? 夢ですか……!? ぼく……ぼく……星海楼に……!? うわあああああああああああああああ!!」
鼻水と涙で顔がぐしゃぐしゃだ。
マロは種男の手を両手で掴み、 震える声で言った。
「種男さん……! ぼく……一生ついていきます……!!」
「じゃあ……貸し一つ、だね!」
種男はそっと携帯端末を見た。
昨日誘った竹娘からの返信メッセージは―― まだ来ていない。
(……返事、来るといいな)
軽い不安と、 星海楼への期待が胸に広がっていった。
◆ ルナルナ側 ― 星海楼へ向かう前日
ルナルナ王国・王城の一室。
竹娘、兎娘(エルザェム)、ブリコ、ローズの四人が同じ部屋でくつろいでいた。
窓の外では、惑星テラ=プレアデスへ向かうシャトルの光が夜空を横切っていく。
竹娘は、手元の携帯端末を見つめながら小さく息をついた。
「……実はね。
種ピーから、惑星テラ=プレアデスのヒノモトにオープンする星海楼に誘われたの」
ブリコが勢いよく振り向く。
「えっ、例の“気になる人”!?ついにっ!? デートなの!?」
「まぁ……で、デートと言えばデート、かな。」
竹娘の頬が少し赤くなる。
「彼の友達二人もいて……“よかったら一緒に”って。でも、私……」
言い淀む竹娘。
ローズが静かに微笑む。「でも……?」
竹娘は正直に話した。
「……実は、ヒノモトの京都府長からも依頼が来てて。
“お忍びで来てくれ、オープン初日のビーチバレー大会に出てほしい。
かぐや姫の再来をサプライズで登場させたい”って。
優待券は何枚でも用意するって言われてるんだぁ。」
兎娘が眉をひそめた。
「オッキーナ・重蔵……あのスケベそうなジジイか……
『輝夜文化ホール』でお前と会見してたヤツだろ?
お前を使った町興しといい、そーゆー才覚はありそぅだな。
で、ルナルナ王室経由で依頼来てんだろ?
そりゃ断れねぇよなぁ。
……で、それ何か問題あんのか?」
竹娘は兎娘にひっそり話しかける。
「……ローズさんを誘いにくくて。お母さんのこと、まだ……」
ローズは察したように首を横に振った。
「ありがとう。気にしないで。私は大丈夫。
むしろ……行ってきてほしい。帰ってきたら、いっぱいお話を聞かせてね」
その優しさに、竹娘の胸が少し痛んだ。
兎娘は腕を組んでそっぽを向く。
「私は行かねぇぞ。初めて会うヤツと何話すんだよ。気まずすぎんだろ」
ブリコは頬を赤らめながら言う。
「私は……その……例の“気になる子”見てみたいけど……邪魔しちゃ悪いし……」
竹娘は、ぎゅっと胸の前で手を握りしめて言った。
「だから、みんな無理に来なくていいの。
私は……どっちでも……
……ううん、違う。
本当はね……
みんな可愛いから種ピーに会わせたくない気持ち半分、
一緒に来てほしい気持ち半分なんだ。。。」
部屋の空気が一瞬止まった。
ブリコ
(いやん……かわい……!一騎当千銀河級戦乙女サマが……ギャップ萌えすぎる……!)
顔が一気に真っ赤になり、枕に顔を埋めてバタバタする。
兎娘(エルザェム)
(虫ばっかり追いかけてたお前が……こんな……これじゃまるで“女の子”じゃねぇか……)
照れ隠しでそっぽを向き、耳がぴくぴく動く。
ローズ
(ふふ……竹娘さん、素敵ですよ。あなたが“自分の気持ち”を言えるようになって……私は嬉しい)
優しく微笑み、そっと竹娘の背中に手を添える。
竹娘は三人の反応を見て自分でも驚くほど自然に笑った。
(……なんか、こういうの言えるようになったの……)
「みんなのおかげだよ」
その時だった。
携帯端末が震えた。
種男からのメッセージだ。
『チケット、二枚までOKって言ってたけど……
もし誰か一緒に行きたい人がいたら、
遠慮なく言ってね』
竹娘は小さく笑った。
(……優しいな、ほんと)
◆ 当日 ― テラ行きシャトル乗り場
水着、勝負下着、非常食、恋愛小説、ボードゲーム――
全部詰め込んだリュックを背負い、竹娘はシャトル乗り場で待っていた。
「おっまたせー!!」
振り向いた竹娘の目に飛び込んできたのは――
白いホルタートップに、濃紺のデニムショートパンツ。
胸元には小さな赤いリボンが結ばれ、頭には大きなサングラスがちょこんと乗っている。
足元はサンダル。
竹娘は目を瞬かせ、冗談めいて言った。
「あれ……私、疲れすぎて幻でも見てるのかな?」
「やっぱり行っていいかな?」
ブリコはにへらっと笑う。
当然ではあるが、ちゃっかりヒノモト入国の手続きまで済ませてきたらしい。
「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
「だって……竹娘ちゃんが行くのに、
私だけ置いていかれるのイヤだし……
その……気になる子も見たいし……」
竹娘は呆れながらも、どこか嬉しかった。
「もう……ほんとに、正直でよろしい……!
あと……今、ヒノモト寒いよ? そんなホットな格好だと、すぐコールドになっちゃうかも。」
二人は笑い合い、テラ行きのシャトルへと歩き出した。
オープンイベント前 ― 京都府長の思惑
京都府庁・特別応接室。
夜空に浮かぶ星海楼の巨大なシルエットを見上げながら、府長は落ち着かない手つきでネクタイを直した。
応接室の扉が静かに開く。
そこに現れたのは、世界有数の資産家の現当主――デア・ポップフェラー。
黄金の髪が光を受けてゆるやかに波打ち、紫水晶のような瞳が静かにこちらを見つめている。
その顔立ちは、ただ整っているという言葉では足りない。
まるで人の手では描けぬ完璧な線で形づくられた彫像のようでありながら、確かに生きている温度を感じさせた。
衣装は、イベント用に仕立てられた「サタングロース」仕様。
深紅のコートに白いファーが縁取りされ、胸元には雪の結晶を模したブローチが輝く。腰には金糸のリボンが結ばれ、その下から覗く黒のスカートが、まるで夜空に落ちる影のように揺れていた。
サタングロースは各国のお伽話に登場する“赤い服の白髪の老婆の悪魔”――
トナカイのひく空飛ぶそりに乗り、12/24の夜に子どもたちにプレゼントを配って回るという。
その悪魔の衣装を身にまとう彼女の背後には、淡く光る羽根の幻影が浮かんでいる様に見えた。
府長は思わず息を呑む。その姿は、彼女が、目の前の存在が、ただの人間ではないことを本能で理解させるのに十分すぎたからだ。
「ポップフェラー様……そのお姿、まるで……」
デアは微笑んだ。その笑みは、慈愛と悪戯の境界線を曖昧にする。
府長はしばし言葉を失っていたが、 すぐに公人としての自分を思い出し、深く頭を下げた。
「ポップフェラー様……
改めて、この星海楼の建設にご尽力いただき、
本当にありがとうございます。」
デアは微笑み、紅茶を口に運ぶ。府長は続けた。
「建設費を全額、貴家が負担してくださったおかげで、
京都府は一円の税金も使わずに、
この巨大施設を得ることができました。」
「地域の負担はゼロ。
企業は高粗利で受注し、
雇用は爆発的に増え、
経済が一気に回り始めております。」
デアは静かに頷く。府長はさらに熱を込めた。
「そして運営も……
自治体と民間企業が主体となり、
維持費は我々が負担する。
収益の八割は地域に還元され、
残りの二割がポップフェラー財団の“運用益”として積み上がる……」
「これほど“全員が得をする仕組み”を作れる方は、
世界広しといえど、貴家だけでしょう。」
デアは微笑を深めた。
「ええ。人が喜び、地域が潤い、そして私どもも利益を得る。それが最も美しい循環ですわ。」
デアの言葉に、府長は思わず胸を熱くした。
手元の資料を整えながら、緊張と興奮を隠しきれずに続ける。
「オープン当日 先日のメールにて了承くださいました
・記念ご挨拶
・ビーチボール大会へ選手としてご参加
・レストランでの食事出席
どうか、よろしくお願いいたします。」
デアは穏やかに微笑み、紅茶のカップを静かに傾けた。
「ええ、もちろんですわ。
皆さまが楽しんでくださるなら、それが私の利益ですもの。」
府長はその言葉に満足げに頷き、しかし次の瞬間、目を輝かせて身を乗り出した。
「そこで、ポップフェラー様。どうですかな?
せっかくですので、挨拶は――水着で登壇されては。
(むふぅ。綺麗なオナゴへの性威迫…やめられんわい……)」
デアは一瞬だけ目を細め、その後、完璧な笑みを浮かべた。
「ええ、承知いたしましたわ。
では…このコートの下に水着を着ておきましょうか。
コートを脱ぐのは――登壇後でよろしいのかしら?」
府長「!!!?」
府長の顔が一瞬で明るくなる。喉が鳴り、言葉が出ない。
(こっ、これは……!? まさか本当にやる気か!?
あとは月京様が来てくれたら……これは盛り上がるぞぉぉぉ!!)
デアは静かに立ち上がり、コートの裾を整えなが ら窓の外を見つめた。
「……欲望は、隠すより、演出した方が美しいものですわね。」
その声は穏やかだったが、どこか冷たい計算の響きを帯びていた。
府長はその意味を理解しきれぬまま、ただ笑顔を貼り付けて頷いていた。
◼️本文:🌙 星海楼ホテル・準備シーン
星海楼ホテルの客室。
五人が泊まる部屋は広く、ベッドが並び、奥に浴室がある。
温泉プールへ向かう前、男子組と女子組がそれぞれ準備を始めようとしていた。
種男が声を上げる。
「じゃあ僕たちが浴室に行って、順番に準備したらいいかな?」
ブリコはすぐに手を振った。
「人数少ない私たちが浴室に行くよ。男子組は部屋で着替えといてくれたら!」
種男は「えっ、あ、はい……」と返事をし、男子組は部屋で、女子組は浴室で準備をすることになった。
—
◆ 浴室
竹娘は鏡の前で髪を整えながら、端末に保存していた小説の一節を思い出していた。
種男を振り向かせたい一心で。
彼女を知る者であれば高度な心理戦や交渉術を用いると想像したかもしれない。
しかし竹娘が参考にしたのは──
株式会社ガリアン書院の“年上女性 × 年下男子”を描いた恋愛小説、『少年と秘書』。
そう、恋愛小説なのだ。
(……“年上女性が、年下男子の心を揺らす”……
これが……恋愛……!
作中:秘書33歳、少年18歳……
現実:私17歳、種ピー13歳……
少し誤差はあるけど……応用でなんとか……!)
竹娘は、鏡の前でそっと表情を作る。
・上目遣い
・少し潤んだ瞳
・困ったようなはにかみ
・「もう、どこ見てるの?」と軽く頬をふくらませる
小説を読み込み、
…真似できそうにない部分は削ぎ落とし、鏡の前で何度も練習した演技。
いよいよ、その積み重ねが試される刻が来ようとしている。
(完璧……!
これで種ピーに、私だけを見てもらえる……!
恋愛小説の“駆け引き”、完全に理解した……!
……基本すら実践したことないのが心配だけど……大丈夫……!)
ブリコが横から覗き込む。
「たけのこちゃん、今日なんかすごい気合い入ってるね?ほんと綺麗!立ってるだけで“戦乙女”って感じだよ!」
竹娘は照れながら肩をすくめる。
「まぁ、今日はそういう戦いというより……
その……ちょっと頑張りたいだけ……って」
そのとき、ブリコの様子を見た竹娘は思わず固まった。
髪をかき上げ、胸を張り、妙に堂々とした立ち姿。
まるで“巻頭カラーの撮影現場”にいるような迫力。コマ送りでポーズを決めているようにすら見える。
(今日、なんかモデルさんみたい……
あ、モデルさんか……
それも現役の……
それもトップクラスの……
それも写真集ランキング常連の……
それも複数の惑星国家またぎフォロワー一千万超えの……
……うっ(;ω;) )
ブリコは満面の笑みで言った。
「なんか、ホテルの鏡ってテンション上がるんだよね!」
竹娘は小さくため息をついた。
「ねぇ……部屋を出たら、男子たちに
“もう、どこ見てるの?”って言ってくれない?
私、今ちょっと心が折れかけてて……」
ブリコはぽかんとした顔で笑った。
「え、えっと……うん!?
よく分かんないけど……うん!!!」
二人は準備を終え、男子組の様子を確認するために部屋の扉をノックした。
竹娘の胸の内では、恋愛小説で学んだ“必勝フォーム”が
静かに燃えていた。
—
🌙 男子組・大慌てシーン
女子組が浴室から出て良いか確認のため、扉をノックした。
「準備終わったー?」
ブリコの明るい声が響く。
—
◆ 男子組の部屋
その瞬間、部屋の中は地獄絵図だった。
扉に張り付いて聞き耳を立てていたマロは、「ひぃっ!?」と情けない声を上げて跳ね上がる。
(ばっ、馬鹿な…っ!?
浴室に入ってまだ5分そこらぞ!?
女性の準備は40分以上はかかる、って
“メンズデートコーチ(モテマインド総合出版)04年8月号”に書いてたのに!?)
勢い余って転び、床をバタバタと転がりながら叫んだ。
「ま、まだですっ!準備できてませんっ!!」
桜司はすでに整った姿で、静かにため息をついた。
(……聞き耳立ててるからだよ、マロくん。)
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!😭」
マロのすぐ近くでは、種男が半泣きになっていた。
訂正…よく見るとガチ泣きである。
「まだですー!!
なんか……なんかこれ違うんですー!!
ぼ、ぼ、僕の……なんで上下にフリルが……えっ……これ……女の子用じゃ……?
とにかく 僕のじゃないんですー!!!」
手に持っているのは、なぜか女性用のプールウェア。
色も形も完全に女子向けで、種男は誰がどう見ても大混乱している。
「あ、それはボクの仕業!すり替えておきました。」
普段使わない一人称に切り替え、マロは床から起き上がりながら あっけらかんと叫ぶ。
彼にとって、女子組の準備が想像以上に早く終わった混乱と、このすり替えはどうやら別枠のトピックらしい。
桜司は腕を組んで冷ややかな視線をマロに向けている。
(……外道、まさに今のお前のためにある言葉だ。)
「桜司くん、助けてぇぇぇ!!これ着てしまったら絶対変な空気になるやつですぅぅ!!
(深呼吸)
……もう、着るしか、ありませんかね。
多分赤面しちゃうんですけど、熱が出たって言い訳しても…信じて、もらえますかね?」
桜司
(いきなり冷静になるなよ。
目が座ってて怖え。
ま、何て声かけたらいいか迷ってたから助かったけど。)
種男
「う、うん……!?
サイズぴったり……
着心地ヨシ……
なんか……落ち着く……気すらする。これなら、大丈夫、でしょ…」
そう言って彼はパーカーのチャックを限界まで閉めて、うずくまる。
マロはその様子を満足気に眺めていたかと思えば、種男のパーカーのチャックをどうやって開かせようかという思考にシフトしつつあった。
扉の前で両手を広げ、女子組が入ってこないように必死に防御態勢を取る。
「だ、だめだよ!
まだ開けちゃだめですぞ!!
男子組はまだ戦闘準備が整ってない!!
今、箱入り娘が!箱からっ!飛び出そうとしてるんです!!!」
ブリコの声が再び響く。
「えー?まだなのー?たけのこちゃん、どうする?」
そして、浴室の外に聞こえない程度に声量を絞って続けた。
「愛しの種男くんの悲鳴、聞こえてるね?
大丈夫そ?」
その質問は竹娘に届かず、彼女はひたすら深呼吸していた。
(……必勝フォーム……
ここで焦らない……
落ち着いて……
種ピー……待ってて……)
男子組の部屋は、その“必勝フォーム”とは真逆の方向へ転がり、マロの「ルナちゃんっ 最っ高ぉぉぉお!!」という謎の奇声が響いていた。
—
🟪 男女合流
ブリコ「もー いいーかい?」
マロ「まーだだよ!」
そんなやりとりが数回続いた後、遂にマロが「もーいいよ」と発した。
竹娘とブリコが浴室に入り、実に40分が経過していた。
(種ピー……またいたずらされたんだろうな……
……かわいそう……と思う一方で
何が起こったのか……起こっているのか…
楽しみにしている…
小悪党な私がいる……)
「ルナちゃん」
マロが種男に内緒で発行・販売していた”女装種男”の写真集…
そこでの種男の名義がルナちゃんなのだ。
そしてマロの先刻の奇声──
竹娘には部屋で何が起きているのか、いやでも想像がついた。
彼女が期待に胸を膨らませ扉を開けた先には…軽く前傾し、両手を前にそっと添えたままの種男が居た。
薄手のパーカーを肩から羽織り、チャックは開いたまま。
布が前へふわりと流れ、輪郭をやわらかく包むように見えた。
袖口が少し長めで、指先が隠れる程度。
髪はふわりと広がり、赤面しているはずなのに、顔には静かな悟りのような表情が浮かんでいた。
目は半分閉じられ、遠くを見るような穏やかさ。
口元には微かな微笑すら浮かび、
「もうどうにでもなれ」と言っているかのように見えた。
想像・期待通り…
いや、期待を遥かに上回るその光景は竹娘にとってあまりに眩しく、彼女の知能指数は瞬時に200ポイント以上も蒸発した。
(え……なに……?
種ピー……その……え…?
フリルふりふり…え…!?)
…語彙力も蒸発していた。
ブリコ
(う゛わ……かわゅぃ……
え?
私の命を救った たけのこちゃんは王子様だから…
たけのこちゃんが好きな子はお姫様で!? アレ!!?)
桜司
(ほんとに女の子にしか見えねぇ……)
竹娘
(……かわいい……
かわいすぎる……
どうしよう……おかしくなっちゃいそう!
心臓が破裂しそう!……)
人生で初めて過呼吸を起こしそうになっている彼女が、知能指数と語彙力を取り戻すにはまだまだ時間を要しそうだ。
種男
「やだぁぁぁぁぁぁぁ!!見ないでぇぇぇ!!
(深呼吸)
……ほな、行こか、みんな。
パーカーのチャックな、部屋出たら閉めるし。」
桜司
(京都弁!?初めて聞いた。
それに さっきからこのテンションの乱高下スイッチングが続くのマジ怖えぇ。
マロ、責任取れよ!)
竹娘
(…ふぅ。
……男物の水着、売店に売ってるから買えばいいのに……
あ、気づいてなさそう……
でも……
私も、このままでいてほしいから……
黙っとこ……
いやん……
私、死後、地獄行き……)
知能指数と語彙力を取り戻しつつあり、呼吸を整えた彼女は、この自分本位な決断を墓場まで持ち込むと決めた。
一方、竹娘とブリコが浴室から出てきた瞬間からマロは「ぶほぁっ!!」と漫画のような音を立てて鼻血を噴き出していた。
(くっ、、、女神ズの破壊力、これほどとは、、、やはり、、、コレが必要になるか。)
彼は荷物から何かを取り出し、そそくさと組み立てをはじめる。
ほどなくして“謎のスタンド”が完成し、輸血パックが点滴のように吊るされている。
しかもそのスタンド、妙にゴツい。
普通の点滴スタンドではありえない太さの支柱、複数のアーム、ペットボトルホルダー、
さらに“何かの機能を隠している”かのような不気味な存在感を漂わせていた。
マロは慣れた手つきで輸血パックをつなぎ、スタンドのスイッチらしきものを軽く叩いた。
「よし……失血死阻止モード、起動……!」
桜司は眉をひそめる。
(お前…いつもより…大量に。
血、それで足りるか!?死ぬなよ。)
マロは鼻にティッシュを詰めながら、スタンドを誇らしげに撫でた。
「ふふふ……これは“旅の友”だよ。
星海楼は広いからね……色々と必要なんだよ……
皆が気にしてそうなアレコレはね…
ふふふ
後で分かるよ。」
何やらツッコミたそうな一同を見渡し、マロはにっこり笑った。
そして…
「はい、ルナちゃ…種男くん。」
彼はツインテールのウィッグを種男の頭にそっと乗せる。
種男はもはや反応すらしない。
五人はようやく準備を終え、星海楼ホテルの客室を後にした。
扉が閉まる音が、まるで“ここから物語が本格的に動き出す”合図のように響く。
竹娘は胸の内で静かに拳を握り、
ブリコはモデルのような軽やかさで歩き、
桜司は淡々と全体のペースを整え、
マロは何か企んでいるような笑みを浮かべ、
そして──
種男はパーカーのチャックをそっと閉めながら、
「これで大丈夫……これさえ閉めておけば……」
と、どこか安心したように小さくつぶやいた。
その“安心”が、
このあと星海楼のビーチエリアで
粉々に崩れ去ることを、この時のルナちゃ…彼はまだ知らない。
五人は廊下へと歩き出す。
「海の天蓋」、「星海の回廊」、「天海ドーム」、「星の大聖堂」──
星海楼内の多彩な施設が、彼らを待ち受けている。
デアの煽り文句案(星海楼ビーチボール決勝前)
「あらあら、皆様。
匿名掲示板で拝見しましたわ。
“見た目だけ乳だけ顔だけオンナ”――ですって?
“生まれ持った特権を取ったら何も残らないクズ”とも。
“香水くさそう”なんて、まぁ失礼ね。」
「でも、それなら皆様が私に負けるはずがなくてよ?
口ばかり達者で、お遊戯ですら私に勝てないなんて――
情けなくて涙が出ますわ。」
「さぁ、どうぞ。この“見た目だけのオンナ”に勝ってみせて?勝てたら、今日だけはあなたを“本物”と呼んで差し上げますわ。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
京都星海楼 公式パンフレット
SEIKAIRO KYOTO — SEA, SKY & STARS COMPLEX
—
◆ ようこそ、星と海の交わる場所へ。
京都星海楼は、
“海・空・宇宙”をテーマにした複合文化施設です。
惑星テラ=プレアデスでは 初の星海楼 として建設され、
最新技術と京都の伝統美を融合した
“未来の観光拠点”として誕生しました。
建設費はすべてポップフェラー財団の寄付により賄われ、
地域企業・自治体との共同運営によって
持続可能な文化・観光モデルを実現しています。
—
◆ 1. エントランスホール
「海の天蓋(あまがさ)」
青い光が揺らめく巨大スクリーン天井。
頭上を滑るマンタ、漂う光の粒。
まるで海の底に立っているような幻想空間が、
皆さまを星海楼の世界へ誘います。
—
◆ 2. 水族館エリア
「星海の回廊(せいかいのかいろう)」
全長 1,200メートル の回廊型水族館。
“深度下降式展示・光子海流システム” を導入。
ヒノモトIT企業 × 夕星重機製作所の共同開発により、
海流の動きが光として可視化され、
魚たちの軌跡と重なり合うことで
“宇宙を泳ぐ海” を体験できます。
深海 → 外洋 → 熱帯 → 古代海 → 宇宙海
と、歩くほどに世界が変わる構造です。
—
◆ 3. 巨大プールエリア
「天海ドーム(てんかいドーム)」
星海楼の中心に広がる巨大水楽園。
• 直径200mメインプール
• スライダー型
• 川下り型
• 流れるプール
• 幼児用エリア
• 星空ナイトプール(夜間限定)
天井は完全可動式で、
昼は自然光、夜は星空が映し出されます。
水面に映る星が揺れ、
“空を泳ぐ” 体験をお楽しみください。
—
◆ 4. プラネタリウム
「星の大聖堂(ほしのだいせいどう)」
高さ60mの巨大ドーム。
内部は一歩踏み入れた瞬間、
天井・壁・床すべてが星空に変わります。
実在の宇宙データを元にした
サタン設計の星空投影システムにより、
星の位置・光度・動きが完全再現。
“宇宙に浮かぶ感覚”を体験できる、
星海楼の象徴的エリアです。
—
◆ 5. レストラン
「SEA OF THE STARS(シー・オブ・ザ・スターズ)」
星海楼最上階の球体レストラン。
360度ガラス張りの空間から、
京都の街並みと星海楼の光を一望できます。
料理は
海洋食材 × 京都伝統野菜 × 惑星テラ特産品
を融合した“星海楼キュイジーヌ”。
夜は星空と街の光が反射し、
まるで宇宙に浮かぶ食堂のような時間を。
—
◆ 6. ホテル
「SEA OF THE DREAMS(シー・オブ・ザ・ドリームズ)」
レストランと同系統の命名で統一された
星海楼直結の高級リゾートホテル。
沖縄の星野リゾートを参考にした
“自然 × 癒し × 未来”の空間設計。
● 特徴
• 全室オーシャンビュー(疑似海景)
• 天井に星空投影
• 竹林を模した露天風呂
• 京都香木アロマ
• 睡眠最適化ベッド
• 子ども向け宇宙学習プログラム
• プール・水族館・プラネタリウム直通の専用通路
優待券をお持ちの方は、
特別価格でご宿泊いただけます。
—
◆ 7. 星海楼の理念
「海と空と星を、すべての人へ。」
星海楼は、
文化・教育・観光・経済をつなぐ
“未来の公共施設”です。
皆さまのご来館を心よりお待ちしております。
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→次の物語へ:本章ノ弐『プレアデス日常奇譚』編 一節「 」
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