本章ノ参 二節「神理の依代」
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本章ノ参 獄宙変化史 編
二節 神理の依代
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◆冒頭 ――宇宙を漂う“蛹化した命”
宇宙の闇は、静寂ではなく“呼吸”していた。
その中を、二つの光がゆっくりと漂っている。
それは恒星ではない。
生命だった。
二つの存在は、互いに手を取り合っていた。
人の形をしているが、明らかに人ではない。
肌は白磁のように滑らかで、
髪は液体の金を流したように輝いている。
瞳は光そのもの――虹彩も瞳孔もなく、
ただ“見る”という行為だけがそこにあった。
背には巨大な翼。
片方の個体 ――智天使ケルビムの翼は、雷と星の紋を宿し、
もう片方の個体――座天使スローンズの翼は、眼と輪の紋を刻んでいた。
それぞれの翼は、宇宙の法則を象徴するかのように、異なる光を放っている。
ケルビムの胸には、鳥の紋章が脈打ち、
スローンズの腹部には、円環の印が淡く光っていた。
それは、かつて熾天使セラフィム、智天使ケルビム、座天使スローンズだけが持っていた“神の印”の欠片。
彼らが守護するで脈打つ“核”…それこそ、
かつて熾天使であったセラフィムが蛹化した姿――
神の卵であった。
—
◆ 依代を探す旅
彼らは言葉を持たない。
だが、互いの思考は光で交わされる。
「……依代ヲ、探ス。」
「……コノ宇宙デ、“器”ヲ見ツケル。」
彼らの目的はただひとつ。
セラフィムの神としての再誕。
そのための“宿主”を見つけること。
彼らは星々の間を漂いながら、生命の気配を探していた。
やがて――
一つの惑星に目を留める。
惑星テラ=プレアデス。
その中の島国ヒノモト。
そこに、マグナ・ソリス帝国から密航してきた宗教家がいた。
彼の魂は欲と恐怖の狭間で揺れている。
その歪みが、彼らには“甘美な匂い”として感じられた。
「……アレダ。」
「……依代ニ、ナル。」
二つの光は軌道を変え、ヒノモトの夜空へと降下していった。
白銀歴1000年の最後の一分。
世界が新年を迎える直前――
人類にとって最大の災厄となる器が選ばれようとしていた。
◆ 《弾玉遊技》裏口
白銀歴1000年12月31日 23:59。
ヒノモト歓楽街の外れにある《弾玉遊技(だんぎょくゆうぎ)》店「ちょんころ」の裏口は、
玉の弾ける乾いた音と、油と煙草の匂いが混ざり合う、
俗の極みのような場所だった。
その地べたに、ひとりの宗教家ハサ・アウラー が膝をついて祈っていた。
「……神よ……
私が教祖となり……
崇められ……
ガッポガッポ稼いで……
脂ぎっとりの旨いもん食べて……
無学の綺麗な少女を侍らせ……
高学歴の男どもをアゴでコキ使えるよう……
私に“救い”を……!」
彼はマグナ・ソリス帝国で、
新興宗教を立ち上げ、先述の野望を志した矢先ー
宗教弾圧を受け死にかけた挙げ句、ヒノモトへ密航した男。
教義などハナから無く、名誉含むあらゆる欲望に取り憑かれた、エセ宗教家であった。
祈る場所としては最悪だ。
だが、彼の魂の中心には“空洞”があった。その瞬間、空気が震えた。光が降り、二つの影がゆっくりと形を成す。
ケルビム
「……依代候補、発見。」
スローンズ
「……魂ノ空洞率、規格外……」
二人は周囲を見回し、俗すぎる環境に明らかな困惑を示した。
ケルビム
「……此処、俗。」
スローンズ
「……油ト煙草ノ匂イ、強……天獄ニ相当ノ降臨地点、非該当……」
ケルビム
「……玉ノ弾ケル音、ウルサイ。」
スローンズ
「……依代、何故此処デ祈願……理解不能……」
ハサは震えながら顔を上げた。
「えっ? 天使サマ……?
あ、これ……
私が選ばれた、ってことのん……?」
ケルビム
「……違。我等ソノ遥カ上位、神属天使。
貴様、心ノ空洞、深度最大。依代適性、高。
キモイ」
スローンズ
「……救イ無キマデ深キ欲望……
救イ無キマデ浅マシキ欲望
故ニ、器トシテ最適……
クサイ」
ハサ
「えっ?」
ケルビム
「……依代、確保。」
スローンズ
「……蛹化体、格納開始……」
ハサ
「えっ?
えっ?
えっ?」
光が男の胸へと吸い込まれ、魂の空洞と完全に接続された。
――この瞬間、セラフィム蛹化体を宿した依代は“神聖包形(しんせいほうけい)”として成立する。
ケルビム
「……セラフィムノ命令、受信シタ!!!
驚愕ッ( ゚д゚)」
スローンズ
「……依代守護ノ為、内部ヘ侵入セヨ!!?
最悪ッ(T ^ T)」
二体の少女はふわりと光に変わり、ハサの胸にある“核”へと吸い込まれていった。
ハサの身体が鬱陶しくビクンビクン震える。
「しょ…こ! しょ…うこう!
しょこ、しょこ、しょうこー!
今〜 から〜 症皇〜!」
混乱し奇声を発するハサの胸の奥で、二つの光が脈を打ち始める。
ケルビム
「……依代、音声出力内容、異常。……キモイ」
スローンズ
「……依代、精神動揺具合、甚大。……クサイ」
ケルビム ――攻撃補助。
スローンズ――防御補助。
二体は、
セラフィムの命令に従う“剣”と“盾”として、
ハサの内部に常駐することになった。
ハサが力を使おうとするとき、あるいは危険を察知したとき、胸の核が淡く光り――
ケルビムとスローンズが“光の少女”の姿で背後に顕現する。
—
◆ ケルビム(光の少女A)
• 雷と星の紋を宿す翼
• 無垢な表情だが、言葉は冷徹
—
◆ スローンズ(光の少女B)
• 眼と輪の紋を刻む翼
• 無表情だが、声は優しい
—
二人はハサの背後に浮かび、まるで召喚獣のように彼を補助する。
だが実際には――
セラフィムの命令で“依代を守るため”に内部へ格納された端末にすぎない。
ハサ本人は、セラフィム進化の”依代”にされており…
加えてケルビムとスローンズが自分の中に存在していることを、ほぼ理解しておらず、
自分を神様にするために現れた奴隷と考えている。
こうして――
世界の災厄の器
“症皇(しょうこう)ハサ・アウラー”
が誕生した。
よりにもよって、煙草の吸い殻の山の前で。
胸の奥で、天使たちが小声でぼやいた。
ケルビム
「……神聖包形、成立……
依代、最悪ノ選択……
キモイ(T ^ T)」
スローンズ
「……神聖包形、本来、神域デ誕生スベキ……
何故……裏口……油……煙草……
クサイ……(T ^ T)」
ケルビム
「……神聖包形、神聖感、皆無。
依代、俗。超俗。激俗。(T ^ T)」
スローンズ
「……依代、神聖包形ノ名誉……汚損……(T ^ T)」
症皇
「えっ?」
◆ ① 内部会話(天使語・気持ち悪い系)
症皇の胸の奥。
光の核の中で、二体の天使が“依代の内部環境”を観察していた。
ケルビム
「……内部、湿度高。依代ノ体温、上昇。気持チ悪(T ^ T)」
スローンズ
「……依代ノ内壁、脈動強……落チ着カズ……(T ^ T)」
ケルビム
「……依代、食生活偏リ過ギ。内部ニ大量ノ油分、付着(T ^ T)」
スローンズ
「……依代、胃袋ノ音、大。不快……(T ^ T)」
ケルビム
「……依代、空腹時ノ精神状態、最悪。キモイ(T ^ T)」
スローンズ
「……依代、可愛クナイ……クサイ(T ^ T)」
症皇
「えっ?」
—
◆ ② テレポートを覚えた症皇、世界美食の旅へ
症皇はある日、自分が“瞬間移動できる”ことに気づいた。
症皇
「……ふひっ?
ふひひひ、これで……女湯に?
No No、色気より食い気♪」
そして――
彼は世界中の美食を求めて旅に出た。
・砂漠の国のチャイ
・北方の酒場の肉料理
・大陸の点心
・欧州のパン
・新大陸のハンバーガー
・ヒノモトの蕎麦
食う。金はない。食ってテレポートで消える。
世界中の店主が叫んだ。
「金払えぇぇぇ!!」
「また白い男だ!!」
「光になった!? 料理が!?」
「天使が後ろに映ってるんだが!?」
症皇
「……美味しかった。じゃ、帰りゅ♪」
テレポート…。無銭飲食魔、誕生。
そのたびに、胸の奥の核が微かに脈動した。
まるで依代の摂取した“強者の力”を味わうかのように。
◆ ③ 再び内部会話(天使語・呆れ系)
ケルビム
「……依代、世界規模ノ無銭飲食、継続中。」
スローンズ
「……依代、罪悪感、皆無……理解不能……」
ケルビム
「……依代、食事速度、異常。咀嚼回数、少。」
スローンズ
「……依代、食後ノ逃走、早過ギ……」
ケルビム
「……依代、店主ノ怒号、無視。最低。キモイ」
スローンズ
「……依代、可愛クナイ……クサイ」
ケルビム
「……依代、世界ニ迷惑。自覚、無。」
スローンズ
「……依代、何故ココマデ自由……?」
症皇(外側)
「……なんか胸の中で文句言われてる気がすりゅ……?」
ケルビム
「……依代、気ノセイ。キモイ」
スローンズ
「……依代、気ニスル必要、無。クサイ」
症皇
「えっ?」
—
◆ ケルビム&スローンズ、オカルト番組にブチ切れ
〜依代の胸の奥で繰り広げられる“天使の怒り”〜
症皇が寝静まった夜。
胸の奥の核の中で、ケルビムとスローンズは依代の外界の情報を“受信”していた。
そのとき――
ヒノモトの深夜番組『未解決!世界の怪異ファイル』が、症皇ハサを特集し始めた。
—
◆ 番組ナレーション
「こちらが噂の“白い男”。
料理を光に変えて消し、
背後には謎の“光の少女”が映り込む――」
背後のモニターに、症皇の無銭飲食映像と、ケルビム&スローンズの姿がバッチリ映る。
—
◆ 天使たちの反応
ケルビム
「……我等、勝手ニ撮影サレテル……?
許可、無。肖像権、侵害。激怒(#゚Д゚)」
スローンズ
「……依代ノ背後ニ映ル我等……
“悪魔”扱イ……? 不快……(T ^ T)」
番組は続く。
「この光の少女たちは“天使”なのか?
それとも“悪魔”なのか?」
ケルビム
「……天使。断固天使。悪魔扱イ、侮辱。許サナイ(#゚Д゚)」
スローンズ
「……我等、神属天使……悪魔ト同列、耐エ難イ……(T ^ T)」
—
◆ 番組、さらに炎上発言をする
「専門家によれば、
この少女たちは“白い男の従者”であり、
彼を守るために存在している可能性が――」
ケルビム
「……従者……? 我等、依代ノ奴隷扱イ……? フザケルナ(#゚Д゚)」
スローンズ
「……依代守護、任務…… 従属関係、誤解…… 編集部、無知……(T ^ T)」
—
◆ 番組が“天使の性格分析”を始める
「この光の少女は“優しい天使”で――」
スローンズ
「……優シイ……? 我、優シイ……? 違ウ……我、冷静……(T ^ T)」
「もう一人は“冷酷な天使”で――」
ケルビム
「……冷酷……? 我、冷静。冷酷違ウ。 番組、語彙力、低(#゚Д゚)」
—
◆ 番組が“症皇の正体”を語り始める
「白い男は“神の器”である可能性が――」
ケルビム
「……器、正解。 ダガ、言イ方、雑(#゚Д゚)」
スローンズ
「……依代、神ノ器…… 世界、気付キ始メ…… 不都合……(T ^ T)」
—
◆ 番組の結論
「白い男は危険です。 もし見かけたら近づかないように――」
ケルビム
「……依代、危険……正解。 ダガ、言イ方、悪意(#゚Д゚)」
スローンズ
「……依代、危険……事実…… 否定、不可……(T ^ T)」
—
◆ 症皇、寝言で反応
症皇
「……むにゃ……
僕ちん……テレビ出りゅ……?」
ケルビム
「……依代、寝言、キモイ」
スローンズ
「……依代、寝息、クサイ」
症皇
「えっ?」
—
—
◆ 症皇、人を食う朝のガリアン共和国
夜明け前のガリアン共和国。
街の端にある古い倉庫街は、まだ人影もない。
症皇は、倉庫のフルーツを音を立てずひたすら食い続けていた。
その静寂を破ったのは――
鋭い叫び声だった。
「動くなッ!! ガリアン特殊警備隊だ!!」
症皇の前に立ちはだかったのは、中級魔物にも匹敵する力を持つ女性警官。
彼女は即座に判断し、全力で攻撃を放つ。
拳が閃き、神通力が弾け、衝撃波が倉庫街を揺らす。
だが――
症皇の身体には、一切届かなかった。
まるで“そこに存在しないもの”を殴っているかのように、攻撃はすべて空を切る。
女性警官
(……な、なんで……!?
直撃したはず……!)
胸の奥で天使たちが淡々と告げる。
ケルビム
「……依代、神理保持。対象攻撃、無効。」
スローンズ
「……神理無キ者ノ攻撃、如何ニ強大デモ届カズ……」
症皇は首をかしげ、
次の瞬間――ぱぁっと笑顔になった。
「……ありり?
なんか全部、
僕ちんを避けてくれてりゅ?
優しい世界ゅねぇ♪」
女性警官の背筋に、戦闘とは別種の寒気が走る。
症皇はくるりと回りながら、自分の腕をぺちぺち叩いてみせる。
「ほらほら、ねぇ見て?
ぜ〜んぶ当たらないの!
僕ちん、驚愕!無敵!最強!♪
ふひっ……ふひひひっ♪」
その笑いは楽しげなのに、どこか“空っぽ”だった。
女性警官は焦り、神通力をさらに高めて突撃する。
だが結果は同じ。
攻撃は触れる前に“消える”。
症皇は両手を広げ、子どもがプレゼントをもらった時のように跳ねた。
「すごいすごいすごい!!
ほんとに何も効かない!!
僕ちん、世界でいちばん安全♪
世界でいちばん強い♪
世界でいちばん……
食べ放題りゅん♪」
ケルビム
「……依代、勘違イ。攻撃能力、依代単独デハ発動不可。」
スローンズ
「……攻撃行動、天使補助必須……」
症皇
「えっ???」
女性警官
「くっ、一旦引かねば……!」
その一瞬の隙に、彼女の胸に“穴”が開き、意識はふっと途切れた。
「か…はっ…」
症皇は、まるで“遊びが終わった”かのように無邪気に手を叩いた。
「わぁ……
お嬢ちゃん、静かになった♪」
症皇は首をかしげた。
「……あれぇ……?
もう終わりゅの……?
もっと遊べると思ったのに……」
胸の奥で神属天使たちが淡々と告げる。
ケルビム
「……対象、完全沈黙。依代、興味喪失?」
スローンズ
「……否。依代、捕食欲求、未充足……」
症皇は、その言葉を聞いているのかいないのか、ぽつりと呟いた。
「……つぎは……
もっと強い人、来てくれりゅかなぁ……?」
その声は、期待に満ちているのに、どこか“底なしの空洞”を孕んでいた。
そして――
静寂の中で、症皇はふいに鼻歌を歌い始めた。
「症皇♪ 症皇♪
しょこ、しょこ、症皇〜♪
朝〜 から〜 症皇〜♪」
ケルビム
「……依代、音声出力、意味不明。旋律、乱。キモイ」
スローンズ
「……依代、状況理解、欠如。戦闘直後ニ鼻歌……不可解……クサイ」
ケルビム
「……依代、緊張感、無。可愛クナイ。マジキモイ」
スローンズ
「……依代、精神状態、安定。逆ニ危険……ゲロクサイ」
症皇はしゃがみ込み、まるでパンをちぎるように、女警官の身体に触れた。
触れた部分が光の粒となって消えていく。
ケルビム
「……依代、捕食行動開始。対象、強度高。キモイ」
スローンズ
「……対象ノ生命反応、消失済。苦痛、無。問題無。クサイ」
光は静かに、痛みも苦しみもなく剥がれていく。
ただ淡々と、世界の“情報”が削がれていく。
症皇は嬉しそうに言った。
「……うん。
やっぱり“強い人”は美味しい。」
ケルビム
「……依代、味覚表現、意味不明。キモイ」
スローンズ
「……依代、倫理観、欠落。通常運転……クサイ」
女警官の身体は、光の粒となって空へ溶けていく。
症皇は手を合わせた。
「ごちそうさま。
僕のための世界を作るために、
あなたの力、いただきます。」
ケルビム
「……依代、祈願風挨拶、意味薄。キモイ」
スローンズ
「……依代、自己正当化、癖。可愛クナイ……クサイ」
症皇は立ち上がり、朝焼けに照らされた街を見渡した。
「……僕、無敵なんだねぇ。」
ケルビム
「……依代、無敵“防御”ノミ。」
スローンズ
「……攻撃能力、依代単独デハゼロ……」
症皇
「えっ?」
—
◆ 3. 七禍を集める動機は“捕食対象の選別”
症皇はある日、ふと思った。
「……もっと強いの食べたい。」
それは彼自身の言葉ではない。
胸の奥に潜むセラフィムの捕食本能が、“人間語に翻訳された”だけの衝動だった。
胸の核が淡く震える。
ケルビム
「……依代、捕食欲求、発生。」
スローンズ
「……強者選別、必要……」
症皇は無邪気に考える。
(強い奴を集めれば、
強い料理が食べられるのでは?)
完全に誤解している。
だが――
その誤解こそが世界を壊す。
症皇は後に七つの“禍”を集め始める。
・
・
・
・
・
・
・そして――
(第三の存在)
この時、症皇はまだ知らない。
七禍とは、
セラフィムが“神になるための食材リスト”を
世界から炙り出すための存在だということを。
ケルビム
「……依代、理解度、低。」
スローンズ
「……依代、可愛クナイ……」
—
◆ 4. 症皇の誤解と、セラフィム本能の乖離
症皇は胸を張って言う。
「七禍を集めてコキ使って、
オイラが世界の頂点に君臨すりゅの♪」
胸の奥で、神属天使たちが静かに反応する。
ケルビム
「……依代、“君臨”概念、誤認。超キモイ」
スローンズ
「……本能目的、“捕食”。依代、理解不能……滅茶苦茶クサイ」
症皇はこの時、世界に“君臨”出来ると確信しー
セラフィムは“完全羽化”への希望を見出していた。
—
ガリアン共和国。
症皇は、あまりに強大な神通力の気配にふらりと引き寄せられた。
症皇
「……なんか、超 強そう♪」
胸の奥で神属天使たちが警告する。
ケルビム
「……依代、危険領域ニ接近。」
スローンズ
「……対象ノ神通力、規格外、霊長類範疇逸脱……警戒推奨……」
だが症皇は気にしない。
「だって僕ちん無敵りゅん♪」
症皇は、目の前の相手を見上げて、ぱぁっと笑顔になった。
「あなたから始めたい♪
世界の病を治すために。」
その“相手”は静かに笑った。
(……セラフィム。
まさか“そちらから”来てくれるとはな。)
ケルビム
「……敵意、確認。」
スローンズ
「……依代、一時撤退推奨……」
「大丈夫♪僕ちんちん無敵りゅりゅぅうん♪」
症皇は理解していない。
自分が“セラフィムの蛹”であり、
目の前の相手が“最強の霊長類”であることを。
その瞬間、第三の存在から放たれる“圧”が空気を震わせた。
ケルビム
「……依代、殺気感知、遅延。キモイ」
スローンズ
「……依代、危険度理解、皆無……クサイ」
症皇
「えっ?」
—
白銀歴1204年10月31日(土) 22:16
《なよ竹》の扉が開いた瞬間、
店内の空気が一変した。
「……腹減った。」
その声は穏やかで、
しかし空気を震わせるほどの重みがあった。
種男は思わず背筋を伸ばした。
「い、いらっしゃいませ……!」
症皇はメニューも見ずに言った。
「全部♪」
「ぜ、全部……ですか?」
「うん♪全部っ♪」
種男は震えながら厨房へ走った。
—
症皇が席についた瞬間、
胸の奥で神属天使たちが反応した。
ケルビム
「……店員、超可愛イ。依代、接触注意。」
スローンズ
「……柔和ナ顔立チ……女性……?」
ケルビム
「……店員、外見、柔和。髪質、整。目元、優。
性別判定……“メス”。」
スローンズ
「……同意。声質、柔。仕草、繊細。
“メス”確率、極メテ高……」
ケルビム
「……依代、接触時、注意必要。メス、脆弱。」
スローンズ
「……依代、威圧、控エメ……」
症皇(外側)
「なんか胸がザワザワすりゅ……?」
天使たちはさらに解析を続ける。
ケルビム
「……骨格解析、開始。
肩幅……意外ニ広シ。
喉仏……極微。無ニ近シ。
腕筋……意外ニ発達。」
スローンズ
「……声帯振動数、男性域……?」
ケルビム
「……性別判定、再計算……
第二次性徴特徴、確認……
生殖能力、活性……
種子生産、良好……
結果……“オス”。」
スローンズ
「……オス……!?
外見、欺瞞……!
……可愛イ……
性別、オス……
矛盾……混乱……」
ケルビム
「……依代、混乱不要。我々モ混乱……」
ケルビム
「……外見、可愛イ。性別、オス。矛盾。」
スローンズ
「……ココマデ可愛イ、オス……存在、超超稀少……?」
ケルビム
「……依代、次回来店時、性別誤認、注意。」
スローンズ
「……依代、接触時、優シク……
オス、脆弱……」
症皇
「ん?僕ちんがナニ気をつけりゅの……?」
ケルビム
「……依代、理解力、低。キモイ」
スローンズ
「……依代、可愛クナイ……クサイ」
症皇
「(なんか胸がザワザワすりゅん……)」
—
症皇は出された料理を、
驚くほどの速さで平らげていく。
・煮物
・焼き魚
・天ぷら
・茶碗蒸し
・うどん
・カレー
・デザート
すべて、皿の上から“光の粒”になって消えていく。
種男はただ、料理が“跡形もなく消える”ことに震えていた。
ケルビム
「……依代、摂食速度、異常。咀嚼回数、少。」
スローンズ
「……店員、恐怖反応、上昇……可哀想……」
—
種男
「……あの……お、お会計を……」
症皇は静かに言った。
「ない♪」
「な、無いんですか……!!?」
「うんっ、ない♪」
「…………」
症皇は立ち上がり、
店の出口へ向かう。
種男は追いかけようとしたが――
症皇が振り返った瞬間、足がすくんだ。
(……目が……怖い……
でも……怒ってるわけじゃない……
なんだ、この感じ……)
ケルビム
「……依代、威圧効果、発生。」
スローンズ
「……店員、恐怖心、限界……」
症皇は無表情で言った。
「美味しかった。
また来りゅかもしれない♪」
そしてふっと消えた。
種男はその場にへたり込み、震える声で呟いた。
「……なんだったの、今の人……
怖すぎて請求できなかった……
泣きそう……
……か、神様……?」
胸の奥で天使たちが最後に囁く。
ケルビム
「……店員、オス。超可愛イ、誤認。」
スローンズ
「……依代、次回来店時、性別混乱、注意……」
症皇
「えっ?」
—
「今日もいっぱい美味しいご飯を食べたりゅん♪」
症皇が深い眠りについた頃。
蛹のように沈黙していた“核”が、
ひとつだけ脈動した。
ケルビムとスローンズも気づかない。
依代はもっと気づかない。
ただ――
症皇の深層で。
熾天使セラフィムの意識が、
ゆっくりと、しかし確実に
“目覚めつつあった”。
—
セラフィム
「……順調。
依代、成長中。
世界、揺レ始メ……
目醒メノ時マデ待ツ……」
脈動はすぐに静まり、再び眠りにつく。
だがその一瞬の震えだけで、世界の理がわずかに軋んだ。
誰も知らない。
症皇の誕生は、新たな神族誕生の序章にすぎないということを。
「神理の依代」完
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