本編 第一章 第三節後編『Neighborhood of なよ竹』

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本章ノ壱 昔醒の兆し 編
      三節 Nexus of なよ竹

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昼の《なよ竹》。
種男は店主・五十守麻呂(マロ)に向き合っていた。


◆ マロ、客威迫で出禁を言い渡される

種男
「五十守さん。あなたの行為は……客威迫です。
なので、出禁です。」

マロ
「………………え?」

桜司
「落ち着け。カマかけだ。深呼吸しろ。」

しかしマロは震えながら崩れ落ち、
「で、出禁……?俺が……?この俺がぁぁぁ……?」
と涙目で店を飛び出していった。

竹娘不在の店内は妙に静かだった。


◆ しょんぼり帰宅するマロ

店の外で肩を落とすマロ。

マロ
「……出禁……俺、出禁……
初恋の子に嫌われた時よりショックだ……」

桜司
「お前、初恋の話はやめとけって言ったろ。」

マロ
「だってよぉ……あいつ、可憐な少女だと思ってたんだよぉ……
なのに男だったんだよぉ……
俺の心が死んだんだよぉ……」

桜司
「知らんわ。」


◆ 桜司、果たし状(?)を届ける

閉店後の《なよ竹》。
桜司がピンク色の封筒を持って現れる。

桜司
「……これ、マロから預かった。“果たし状”だそうだ。」

種男
「えっ……果たし状……?」

角にハートのシール、甘い香り。
どう見てもラブレター。

種男
「……これ、果たし状じゃなくて……ラブレターでは……?」

桜司
「俺もそう思う。」

封を開けると丸文字でこう書かれていた。

『小粒 種男 殿
 いついつどこどこに来い。
 俺の初恋を成仏させてくれ。
 五十守麻呂』

種男
「……成仏……?」

桜司
「行ってやれよ。あいつ、泣きながら書いてた。」


◆ 種男、恐る恐るマロのガレージへ

夜。
種男は果たし状に書かれた住所──
マロが格安で借りている“住まい兼ガレージ”へ向かった。

扉を開けると──

桜司
「来たか。」

マロ
「うわあああああああああああああ!!
出禁はやだぁぁぁぁぁぁ!!
俺の初恋を返せぇぇぇぇぇ!!」

種男
「えっ……えええ……?」

マロは泣きながら土下座した。


◆ 初恋勘違いの懺悔

マロ
「俺はなぁぁぁ!!
お前を初めて見たとき、
“透明感のある可憐な少女”だと思ったんだよぉぉぉ!!
そしたら男だったんだよぉぉぉ!!
ショックで胃が死んだんだよぉぉぉ!!
だからつっかかってたんだよぉぉぉ!!
逆恨みなんだよぉぉぉ!!」

桜司
「こいつ、クソみてーに自分勝手なヤローだな……」

種男
「……それは僕のせいじゃないですよね?」

マロ
「成仏させてくれえええええ!!」


◆ 不気味なガレージの“仕事場”

種男が奥へ進むと──
薄暗い裸電球がひとつだけ吊るされた異様な空間。

天井から吊られた複数のマネキン。
女性体型で半端な衣装を着せられ、
顔にはマロの手書きの表情。

種男
「……えっ……な、なんですかこれ……?」

桜司
「俺も初めて見た。正直、怖い。」

マロ
「ようこそぉぉぉ!!俺の初恋の墓場へぇぇぇ!!」

種男
「怖い怖い怖い怖い!!」


◆ 衣装試着 → いつの間にか撮影会

マロはマネキンの衣装を引きちぎるように外し、
種男に差し出した。

マロ
「これがコンテスト用の試作品だぁぁぁ!!
着てくれぇぇぇ!!
俺の初恋を成仏させてくれぇぇぇ!!」

桜司
「……やれ。こいつ、今日ずっと泣いてた。」

種男は恐る恐る白いワンピースを着る。
肩にレース、胸元に小さなリボン。

鏡の前に立つと──

種男
「……あれ……?なんか……似合ってる……?」

マロ
「似合ってるぅぅぅ!!よし、撮影会だ!!」

種男
「えっ!?撮影会!?聞いてない!!」

マロはカメラを構え、突然プロの写真家のようになる。

マロ
「いいよ!!親指を噛んで潤んだ瞳をしてみようか!!」

種男
「なんだコレ!!???」

桜司
「お前……どこで覚えたんだよその指示……」

マロ
「次!肩をすくめて“あたし……迷子なの……”みたいな顔!!」

種男
「そんな顔できない!!」

マロ
「できてるぅぅぅ!!天才かお前ぇぇぇ!!」

桜司
「……地獄だな。」

しかし種男は次第に笑顔になり、
ポーズを取るのが楽しくなってくる。

種男
「……これ、ちょっと楽しいかも……」

桜司
「お前まで乗るなよ……」


◆ 翌日:マロ、写真集を勝手にオフセット印刷

翌日。
《なよ竹》の外がざわついていた。

「新刊入荷してるぞ!!」
「この子、誰!?めちゃくちゃ可愛い!!」
「写真家のコメントがヤバい!!」

種男
「……新刊?」

店の前には──

“小粒 種男 女装写真集 vol.1”

の冊子が山積み。

種男
「えええええええええええええええええ!!???」

写真家コメントにはこう書かれていた。

「もう、髪に花をさしてあげたくなるような
可憐な少女はこの世から消えた。
そう、思い込んでいた。
だが──彼は違った。」

種男
「意味が分からない!!!!」

桜司
「……マロがオフセット印刷して売ってる。」

種男
「やめさせてぇぇぇぇ!!」


◆ 種男、試着を楽しみ始める

その後も種男は鏡の前で衣装を当ててみる。

種男
「……これ、意外と……似合ってる……?」

マロ
「似合ってるぅぅぅ!!俺の初恋が成仏するぅぅぅ!!」

桜司
「……なんだこの地獄。」

種男は次第に試着を楽しむようになっていった。


◆ ラスト:竹娘、写真集をこっそり入手

翌日。
竹娘は《なよ竹》のカウンターで、
種男のスマホに映った昨日の写真をふと見てしまう。

竹娘(心の声)
「……ん?種ピー……女装……?
かわ……いや違う違う……外交資料……」

竹娘はそっと写真を保存した。

その夜。
ルナルナ帰還後の自室。

机の上にはこっそり購入した紙袋。
中には《小粒 種男 女装写真集 vol.1》が二冊。

竹娘(心の声)
「……観賞用と保管用。
うん、これは必要経費……外交資料……」

ページをめくるたびに白ワンピースの種男が現れる。

竹娘
「………………っ」

胸がぎゅっとなる。
息が少し詰まる。

竹娘(心の声)
「なんで……こんな……
胸が……ぎゅって……するの……?」

親指を噛んで潤んだ瞳の写真が出てくる。

竹娘
「………………っっっ」

本を閉じる。
閉じたけれど、すぐにまた開く。

竹娘(心の声)
「……種ピー……かわ……いや違う……外交資料……外交……」

顔が熱い。
耳まで熱い。
心臓がうるさい。

竹娘
「……どうしよう……
帰りたい……いや帰りたくない……
いや帰りたい……
いや……種ピーに会いたい……」

布団に顔を埋めて足をばたばたさせる。

竹娘(心の声)
「……こんなの……悶えるに決まってるじゃん……」

その夜、竹娘は写真集を三回読み返した。

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