本章ノ壱 二節(前編)「Battle of Besitiarium」(改稿・追記中)
白銀歴1204年9月22日(月)
惑星ルナ=クラリオン 星都独立領ルナルナ
王室移動要塞「天宮城(うぐしろ)」構内
ーー警務庁:赤イ兎 総司令 兎団 将萌が放った言葉ーー
「理念も思想も業態も違う連中らが、巨大な利権を分け合うために共生している。
奴らの“餌”は税金だ。
便宜的に、各界に巣食うそうした連中を“ウラガネ”、個人を“ウラガネビト”と呼ぶことにした
我々の目的は、この国に潜むウラガネの排除ーーー」
その言葉が、今まさに現実となっていた。
ベスティアリウム―― ルナルナ領内の少惑星《アドレナ》にある とある私邸。
白銀歴1204年12月5日(金)、月京 竹娘(つきのみや たけのこ)はその影と対峙することになる。
──────────────────────
本章ノ壱 昔醒の兆し 編
二節 Battle of Besitiarium
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第一幕 生贄たちの入場
第一項 ベスティアリウム
ベスティアリウム――
ルナルナ領内の少惑星《アドレナ》に存在する、
世界有数の化粧品企業「鳳栄(ほうえい)コスメティクス」を擁する「伏原(ふくはら)財団」の監事にして、
同社の実質的な経営実務を取り仕切る男――鷹栖太郎(たかはし たろう)の私邸。
表向きは化粧品業界の社交場。
しかし実態は、違法コピー品の生産工場であり、さらに裏では、生体兵器 “魔獣” の製造・売買が行われている。
敷地の地下には、古代帝国のコロッセオを模した巨大な闘技場がそびえ立つ。
そこでは各国から誘拐された “生贄” を魔獣と戦わせる興行が日常的に行われ、
観客席は場内から丸見え――
「勝者は存在しない」という絶対的な自信の象徴だった。
施設全体にはAI監視網、自律兵器、生体センサーが張り巡らされ、侵入者が生きて帰る可能性は限りなくゼロに近い。
――その地獄に、今まさに三人の生贄が連れ込まれようとしていた。
第二項 三人の生贄
白銀歴1204年12月5日(金) 深夜
ルナルナ領内 少惑星《アドレナ》 ベスティアリウム 地下闘技場
司会の甲高い声が響く。
「みなさぁん、お待たせしました!
生贄の解体ショー……ではなく、魔獣とのバトルの始まりです!
さぁ〜〜まずは、本日の“生贄”入場のお時間です!!
皆様が”アンケート”で選んだ子は現れるのか!?注目ですよ〜〜!!」
観客
「おおおお!!」
「誰だ!?誰が来た!?」
「衣装で当てるの好きなんだよな〜!」
英数字が印字された頭巾で顔を隠され、それぞれ“観客が選んだ衣装”を着せられた三人の生贄が連れられてくる。
各々の首には、銀色の金属製の首輪がはめられていた。
小さなマイクがついており、生贄の声はすべて場内スピーカーに拡声される仕組みだ。
観客 「動悸の息づかいまで拾ってるぞ」 「悲鳴がよく聞こえるやつだ」「嗜虐心 昂るうぅうう〜」
頭巾1:カウガールビキニ
頭巾3:白薔薇を胸に抱いた純白の喪服ドレス
頭巾Ex:黒ワイシャツ・短パン・リボン・素足の未完成制服
さらに、手品師が使うような不気味な箱が台車に載せられて運ばれてきた。
観客席から歓声と笑いが飛ぶ。 事前案内では生贄の詳細は伏せられているらしい。
司会 「それでは、生贄たちのご紹介です!」
頭巾1が剥がされる。
「まずは、ルーシア寒冷帝国の大人気グラビアアイドル、ブリコ・モニトゥちゃん!
全世界の少年たちが彼女の悩殺ダイナマイトボディに釘付けだったことでしょう!
デビュー時に大ブレイクした“カウガールビキニ”で登場です!!」
観客
「うおおお!!」
「この衣装で写真集買ったわ!!」
「スライスした霜ブリ肉を存分にしゃぶしゃぶしたいねぇ(*´Д`)」
司会は続ける。
「なんと!
ブリコちゃんをここへ送るよう我々にコンタクトを取ってきたのは、芸能事務所に勤める実の姉!
妹の美貌に嫉妬したのか、はたまた大金が欲しかっただけなのか……いやぁ、家族って怖いですねぇ」
ブリコはその場に崩れ落ちた。
「……嘘。お姉ちゃん……?」
次の頭巾3が剥がされる。
「続いては、アルビオニア国籍の大学生、ローズ・マリガンちゃんです。
なんと本日は、母親リディアさんが主演した舞台《白薔薇の嘆き》の衣装で登場です!!
親子そろって舞台に立てるなんて素敵ですねぇ〜!」
観客がざわつく。
司会
「そう、この子は――
当時 五十六歳の王配と十九歳の舞台女優リディアさんとの間に生まれた、アルビオニア王室の忌子なのです♪
そんな出自……“消しておきたい”と考える連中がいても、まったく不思議じゃありませんよねぇ♪
それにしてもオルドリック・アイアンヴェイル公爵、熟れる前のフレッシュなリディアさんを存分に味わっていたようで…
中々の好色家ですねぇ。」
ローズは震える声で呟いた。
「お母……さん?
そんな……
……お父さんは死んだって……
学生時代からの付き合いだった、って……」
観客が嘲笑する。
「リディアはどうしたー!」
「俺、あいつのファンだったんだよ!」
「ママとムスメの親子丼セットで見たかったのになー。魔獣が ”料理” したがってるからよぉ♪」
司会は肩をすくめた。
「皆様、事前のご案内では“母娘セット”をお届けする予定でしたが……
残念ながら、母親のリディアさんは連れて来られませんでした。」
「はぁ?」「楽しみにしてたのに!」
司会は軽く笑う。
「まぁまぁ皆さん、あの……頭巾2……じゃなくてリディアさんねぇ、思ったより暴れまして。
実行犯の方々も“商品”を傷つけないように頑張ったんですが……
娘を庇って必死に抵抗してくるもので。ああいうの、困るんですよねぇ。効率が悪くて。」
箱の蓋が開く。
中には、もはや“人の形”を留めていない何か。
「いやぁぁぁぁぁああああ!! お母さん……っ!! お母さん!!」
ローズの絶叫が、首輪のマイクを通して場内に響き渡った。
観客はその悲鳴すら娯楽として笑った。
「リディアの最終公演より盛り上がってんぞ」
「親子で悲鳴の二本立てとか最高のショーだな」
「人間の破壊はデータだ。恐怖の表情、心拍、悲鳴……全て人工知能に学習させられる」
「その絶望の表情、絵画にしたい。母親の残骸と並べれば完璧だ」
司会
「母親の愛って、ほんっと迷惑ですよねぇ。おかげで予定が狂ってしまいました♪」
司会が手を叩く。
「その代わりと言っては何ですが、特別商品をご用意いたしました。
何か制服姿のようですが……もう分かった方は、相当なマニアですねぇ。」
頭巾Exが剥がされる。
「今年9月、彗星のように現れた―― ルナルナ王室の近衛騎士、月京竹娘ちゃんです!
本日はジャケットとブーツを剥ぎ取った、特別仕様の“未完成近衛スタイル”で登場です!!
いやぁ〜、これはレアですよ〜〜!!」
観客が沸き立つ。
その足元には、 奪われた装備が“戦利品”のように雑に並べられていた。
王月武装《寝待太刀》のレプリカ。
天ノ羽衣《天竹織羽》の模造布。
そして、偽情報を詰め込んだ携帯端末。
職員が端末を拾い上げ、観客に見せつけるように振った。
「見ろよこれ! 王室の近衛が使ってる“機密端末”だってよ! 中身は……なんだこれ、データだらけじゃねぇか!」
別の職員が笑いながら覗き込む。
「へっ、どうせ大したもんじゃねぇよ。後でLPSDに渡してやるか?」
竹娘(海老で鯛を釣るっ♪)
――闘技場の最上部。
厚い防弾ガラスに囲まれたVIP監視室で、一人の男が静かに興行を見下ろしていた。
「……ほう。これが あの忌々しい王室の、新しい玩具か。」
司会の甲高い声とは対照的に、太郎の声は低く、冷たかった。
「さて……どれほど“私に貢献してくれる”? 見せてもらおうか、王室の犬。」
司会
「たけのこちゃん…ハァ(溜息)
ブリコちゃん、ローズちゃんに比べて色気と華やかさ、それに乳も 全っ然 足りませんね……
まあ、スタイルだけは悪くないですが。
最期にどんな声で鳴いてくれるのか、楽しみです。」
竹娘((# ゚Д゚)……ちょっと待って、なんで私だけ扱い雑なん?)
司会が手を広げる。
「さて、戦いに出る順番を、本人達に話し合って決めてもらいまっしょぅう!」
観客が笑いながら囁き合う。
「助けを求める目がいいねぇ。慈善事業じゃ絶対見られない“純度100%の弱者”だ」
「この時間好きなんだよなー。みんな行きたくないって喚くのが面白くてよ」
「先週の男なんか親友を突き出してて笑ったわ」
「それと、生贄の皆さんには“武器”を選んでいただきます!
どれもバラエティ豊かに古今東西様々な物を取り揃えました!」
台車に載せられた武器が運ばれてくる。
錆びた短剣、折れた槍、木の棒、割れた盾、鎖の切れ端、旗、鍋の蓋……
司会
「ちなみに〜、どれを選んでも“魔獣の皮膚は傷つきません”のでご安心を!
あくまで気休め、気休め♪」
ブリコは短剣を両手で握りしめ、 刃先が震えてカチカチと音を立てていた。
ローズは頭を抱えてうずくまる。 「どれを選んでも……死ぬだけ……」
司会
「本番開始は15分後です。あ、それまでに”アンケート”のご回答をお忘れなく!」
観客席のあちこちで端末が光り始める。
画面には、各国の少年少女の顔写真、年齢、プロフィール。
「難易度」「成功報酬」「人気度」の数値。
――得票数が高かった子が、次に誘拐される。
「この子可愛いじゃん。連れてこいよ」
「こっちはスタイル良いな。来週見たいわ」
「投票した子が選ばれたらしたらポイント入るし」
ブリコとローズの心が砕けていく。
「……助けて……誰か……もう……いや……」
絶望の沈黙が落ちた。
竹娘はそっと二人の肩に手を置いた。
「ローズちゃん、ブリコちゃん。大丈夫。私を信じて見ててね。」
二人は涙の中で竹娘を見上げる。
竹娘は小さく微笑んだ。
「……ねえ、二人とも。私、こう見えて“ちょっとだけ”強いんだよ。だから大丈夫。ここから先は、私に任せて。」
震える手を握り返す。
「大丈夫。私、こういうの得意だからさっ。」
その言葉は、絶望の底に落ちていた二人の心に、ほんの少しだけ光を灯した。
司会
「それではショーを開始します!!お三方、戦いに出る順番は決まりましたかぁ?」
竹娘は毅然と手を挙げた。
「はい、私が先鋒も中堅も大将も全部やります。
あ、そうだ。武器を選びたいので、この手枷、外してもらえます?」
観客の怒号が飛ぶ。
「調子に乗るな!!!」
「はあ? 正義の味方にでもなったつもり?」
「まさか魔物に勝てる気でいるんじゃね?」
「儀典官のお遊びじゃねーんだぞ!」
「あの近衛の女、強がってる顔がムカつくな。泣き顔に変わる瞬間が一番の酒の肴だ」
「生徒たちには“命の尊さ”を説いてるがね……本音を言えば、こういう壊れゆく人間を見るのが一番学びになるんだよ。
さぁ、竹娘くん。君の“最期の授業”を見せてくれ」
――戦いを前に、竹娘は与えられた任務の説明を思い出していた。
第三項 二十五分の潜入作戦
「――ラゴモルファ隊員二人との共同作戦?」
竹娘が眉をひそめると、兎団は淡々と頷いた。
「正確には、事前に潜入している兎娘を含めて四人だ。」
兎団の声は冷静で、しかしその奥に若干の緊張が滲んでいる様に聞こえた。…気のせいかもしれない。
「王室が捕らえたウラガネビトを使い、ベスティアリウム側に“竹娘捕獲”の相談をさせる。
――お前はわざと誘拐される囮、という訳だ。」
兎団は続けた。
「なお、お前の王月武装《寝待太刀》、天ノ羽衣《天竹織羽》、携帯端末は奪われる前提のレプリカを用意してある。
本物はお前の部屋に置いておけ。」
竹娘
「……つまり、丸腰で放り込まれて、魔物相手に“時間稼ぎ”しろってことですね。
派手どころか、かなり悪趣味じゃないですか。」
兎団
「そう。目標は試合開始から25分だ。」
竹娘「……25分?」
兎団
「最初の25分で、兎娘が観客アンケートをハックし、観客情報を吸い上げる。
兎娘のタスクが完了したら、ラゴモルファ隊員が5分以内にターゲット――
鷹栖太郎と司会を捕縛し、闘技場にいるお前と合流する。」
その後、ルナルナ公共安全総局(Lunarna Public Safety Directorate 通称:LPSD)の機動隊が突入・制圧する。
制圧完了までに全員で離脱しろ。立ちはだかる敵は撃滅して構わん。」
竹娘「観客はどうなさるおつもりで?」
兎団
「逃がす。泳がせる。
奴らの背後にいる各国各界のウラガネを炙り出すためだ。」
竹娘は腕を組み、困ったような笑顔で冗談交じりのため息をついた。
「随分と簡単に言ってくれますね。」
「その嬢ちゃんの言う通りだぜ~、LPSDが来るまでの30分で全て終わらせろってか!? 相変わらず無茶言うなぁ。」
その時、背後から陽気な声が響いた。
「よろしくな!」
スクワットを繰り返す巨漢――ラゴモルファ隊員のクイラ。
続いて、マスケット銃をくるくる回しながらポーズを取るふくよかな女性が笑った。
「見てくれが良かったら、私が囮役買ってやるんだけどな!」
同じくラゴモルファ隊員のセレグレア。
その笑顔には余裕があり、戦場慣れした者の落ち着きがあった。
兎団
「お前の実力なら魔物を屠るのも容易だろうが……兎娘の情報収集が成功する様……
25分は絶対に稼げ。
変態客どもの嗜虐心を刺激し、戦いを長引かせろ。」
竹娘
「(嗜虐心、ね……こんな任務じゃなかったら、演技 楽しめそうなんだけどな。) 了解。」
兎団
「各自、兎娘から送られたベスティアリウムの情報――特に間取り図は頭に叩き込んでおけ。」
竹娘
「兎娘さんの特徴を教えてください。私は会ったこともなければ、公式記録にも情報がございませんので。」
兎団
「この任務を終えたら、お前と同じく“名家の末裔”になる予定だからな。
金髪に桃色の瞳のチビ女だ。」
竹娘は頷き、深く息を吸った。
「了解。……では、魑魅魍魎どもの群れに飛び込んで参ります!!!」
第二幕 Battle of Besitiarium
第一項 豚魔獣ブタニク
闘技場の照明が一瞬落ち、 巨大スクリーンにノイズ混じりの映像が映し出される。
低い電子音とともに、黒背景に白い文字が浮かぶ。
《ポルクス型魔獣》紹介
— B E S T I A R I U M B I O – W E A P O N S —
画面が切り替わり、豚魔獣のシルエットが浮かび上がる。 背後には軍事施設のような無機質な壁。
【SPEC】
・分類:生体兵器(近接破壊型)
・耐久:A
・攻撃性:A+
・制御難度:B
・推奨用途:反乱鎮圧/戦場掃討/強姦ショー
映像は、豚魔獣が檻を破壊するスローモーションへ。 観客席から歓声が上がる。
【DEMO CLIP】過去のショー映像が流れる。
・巨大な影が跳ね上がり、観客が沸く
・地面が揺れ、砂煙が舞う
・悲鳴と歓声が混じる音声だけが響く
司会(映像ナレーション)
「高い攻撃性と耐久性を誇る、ベスティアリウムの人気アクター!
人気なのはぁ、老若男女問わずぅ、
獲物たちを喰らいながら犯し、引き裂くのが画面映えするからに他なりません!!!
本日は特別に、最新ロットの個体をお披露目しまぁす!」
【PURCHASE INFO】画面が明るい色調に変わる。
★同型個体の購入はこちら! アクセスコード:PORK-AX77 価格:応相談(軍事利用ライセンス込み)
※在庫に限りがあります
※生体兵器のため返品不可
※個体差があります
観客 「お、今日のロット買えるのか!」 「前のより動き良さそうだな!」
竹娘(……通販番組 in ベスティアリウム。)
【ENTRY】
画面が赤く染まり、 巨大な影が通路の奥から現れる。
司会
「さて、本日のバトルアクターは―― 大人気の豚魔獣《ブタニク》くんです!
美少女の生贄達を前に大興奮しております!」
竹娘 「び、美少女……(ちょっと嬉しいのが悔しい)」
観客
「ブーちゃん頑張れー!」
「ちょっとは手加減しろよー!」
「前回のピストン運動後の“アレ”はやりすぎだったけどな!」
司会 「ブタニクくーん、1人目の肉は硬そうだけど、 2人目、3人目は柔らかくて脂の乗った極上肉が待ってるぞー!」
竹娘「(#^ω^)」
「硬そう? 柔軟なんですけど!? (……確かに体脂肪率は低めだけど……)」
観客 「え、そこ怒るの?」 「かわいいなこの子」 「いや怒るポイントそこかよ!」
司会 「おおっと〜? 竹娘ちゃん、まさかの“肉質評価”にブチギレだぁ〜!」
巨体を揺らしながら、よだれを垂らし、 ブタニクが竹娘を舐め回すように見つめる。
「ぐぽぽ……確かに脂は乗ってなさそうだけど美味しそうだぽー…… たまには赤身肉も良いもんだぽぽぽ……」
竹娘(く……臭っ。 豚なのにイカ臭っ……。)
突如、ブタニクが突進する。
「もう我慢できな~い!!!い、いただきマンモスぅううう!!」
トレーナー 「ま、待て! まだあの娘の手枷を外してないし、武器も渡してな――」
言い終わる前に。
竹娘の身体が―― ふっ、と消えた。
観客 「え?」 「消えた?」 「瞬間移動?」
次の瞬間。
ドグチャッ!!!
竹娘の足が、 ブタニクの後頭部から首の後ろに延髄蹴りが突き刺さる。
巨体が顔面から地面に倒れ込み、 ドゴォォォン!! と沈む。
砂煙が舞い上がり、 闘技場が一瞬静まり返る。
ブリュ! ブチュ!! ブリュリュリュ!!! ボジョレヌヴォヴォオオ…
ブタニクは痙攣し、糞尿を垂れ流し、やがて動かなくなった。
観客 「…………」 「…………え?」 「…………死んだ?」
司会 「えっ……? あっ……? えっ……?」
竹娘は短パンの裾を軽く払って立ち上がる。
「お生憎さま。あなたのウンコになるつもり、ないの。」
竹娘(あ、やっちゃった。一瞬で倒しちゃった…… まさかこれで終わりじゃないよね?)
司会の耳元の通信機が震える。 太郎の怒声が漏れ聞こえる。
「(クソ野郎! どなってんじゃねぇわよ! このドぐされ畜生がっ!)
さ、さぁー! とんでもないことになりましたぁ!! まさかルナルナの近衛騎士がこんなに強かったとはぁ!!
こ、これは想定外!!」
声が裏返っている。 余裕が消え、焦りが滲む。
「そ、それでは……久しぶりに……軍事作戦にも投入される強力な個体を…… つ、連れてきましょう!!」
観客 「おおおお!!」 「やっと本番か!」 「さっきのは前菜だろ!」
――その喧騒の中。
ブリコは、さっきまで震えていたとは思えないほど明るい声で叫んだ。
「すごいよ竹娘ちゃん!!いっけ〜〜!!」
片腕を高く上げ、涙目のまま笑っている。
一方でローズは、 竹娘がブタニクを一撃で沈めた光景をまだ理解できず、 呆然と立ち尽くしていた。
「……なに……今の……? 人間が……あんな……」
観客はその様子に苛立ちを募らせる。
「はぁ?生贄同士で盛り上がってんじゃねぇよ」
「調子に乗ってんじゃねぇぞ!」
「次はもっと派手なの出せよ!!」
竹娘(そうだよね。 こやつらは、私たちの死を諦めない。諦め、悪いよね。)
――試合開始から4分。
第二項 テレサロイド
《テレサロイド・シリーズ》紹介
闘技場の照明が落ち、巨大スクリーンが再び点灯する。 ノイズ混じりの電子音とともに、黒背景に白文字が浮かぶ。
— B E S T I A R I U M B I O – W E A P O N S —
・ベース:故カンフー俳優「オシボ・リー」のクローン
・融合体:昆虫魔獣(カマキリ種)
・装甲:黒色ラバー拘束スーツ
★商品名:テレサロイド
★バトルアクター名:カマキリ人間
画面が切り替わる。
【DEMO CLIP】
司会(ナレーション)
「こちらは、某国の“防衛大臣一家”の暗殺任務に投入された際の記録映像です!」
観客 「お、来た来た!」映像には、 一家の寝室に静かに侵入するカマキリ人間の視点。
- 子どもが寝返りを打つ
- 妻が目を覚ます
- 大臣が叫ぶ間もなく切り刻まれる
観客 「うわ、マジでこいつだったのか!」 「不法移民排除法を提案したクソ大臣だろ?」 「そりゃ消されるわな〜」
竹娘(……ウラガネビトってのは犯罪の証拠を見せたがるって聞いたけど、こんなにあからさまにやるなんてね。)
【PURCHASE INFO】
★同型個体の購入はこちら!
アクセスコード:MANT-TR42
価格:応相談(5体ロット単位)
※受注生産品/標準納期2ヶ月
※返品不可 ※無償保証期間内のオーバーホール半額
観客
「軍で使われてたやつだよな?」
「領主に勧めてみるか」
「暗殺もできて娯楽ショーもできるとか万能じゃん」
竹娘
(……軍はもう使ってないよ。証拠が残りすぎるから。
この人たちは……“自分たちも使い捨てられる側”の可能性すら想像できないのかも。)
【ENTRY】
画面が赤く染まり、 影からスラっとした男性が現れる。
次の瞬間、 皮膚が裂け、黒い拘束スーツの隙間から 昆虫の腕が二対、ギチギチと音を立てて伸びる。
司会 「人間社会にも擬態可能な優秀な製品です! ブタニク君ほどの個性はありませんが、その分“仕事は確実”ですよ〜!」
カマキリ人間が咆哮しながら入場する。
竹娘(リーさん主演の映画好きだから……この瞬間見るの、ほんと嫌……)
カマキリ人間 「ギチチチチ……!」
竹娘は“恐怖に震える少女”の表情を作りあげた(※演技)
観客 「いいぞ!!」 「その顔だ!!」 「さっきみたいに余裕ぶるなよ!!」
竹娘(宇宙海賊の頃、いろんな人を欺いてきた経験が……こんなとこで活きるなんて。)
カマキリ腕が高速で突き出される。 竹娘は淡々と避け続ける。
「あ……くっ……!」 肩で息をし、額に汗を浮かべる“フリ”をする。
前蹴りが飛ぶ。 「っ……ぐぅっ!!」 わざと腹で受けて派手に吹っ飛び、砂埃の中で咳き込む。
「はぁっ……はぁっ……!」 脂汗が粘液のように流れる。(※もちろん演技)
(あと14分……長いなぁ。)
刃が振り下ろされる。 「きゃあああ!!」 ギリギリで避ける。
(刺さりそうに見えてるなら十分。)
跳びながら両手を前に出す。 刃が――スパァン。 木の手枷だけを切り裂く。
(うん、シネマティック。)
突進してきた腕を掴む。 指先がわずかに力を込める。
ミシッ。
腕が不自然な角度に折れ、 そのまま自分の胸部装甲へ突き刺さる。
「ふぅ……危なかった……」 (※しつこいですが全部演技です)
カマキリ人間は膝から崩れ落ち、砂埃を巻き上げて倒れ込んだ。
司会
「え、え〜〜……!? カマキリ人間《テレサロイド》くん、まさかの……戦闘不能……!?
こ、これは……想定外!!」
竹娘(……あと12分。この調子なら、なんとかなるかな。)
ブリコは勢いよく立ち上がった。
「やったぁぁ!!竹娘ちゃん最っ高ぉ!!そのまま全部やっちゃえーー!!」
1戦目よりも声が大きく、 涙ではなく“興奮の笑顔”になっている。
ローズは胸に手を当て、 震えながらも竹娘をしっかりと見つめていた。
「……すごい……本当に……勝ってる……」
その声には、 1戦目にはなかった“希望”がわずかに混じっていた。
化粧品企業の大株主・老婆 が立ち上がって怒号が響き渡る
「何やってるのよ!! あのナマイキな顔を早く恐怖に歪めて頂戴!! 動きを封じたら、ゆっくり壊していくのよ!!」
あっけに観客 「そうだ!!」 「もっと苦しませろ!!」
竹娘(……ほんと怖。)
――試合開始から16分。
第三項 クモ女
闘技場の照明が落ち、巨大スクリーンが点灯する。
— B E S T I A R I U M S P E C I A L U N I T —
司会(ナレーション)
「本日の3戦目は……興行用に特別製造された個体です。
強さは先ほどの2体とは比べ物になりません。反響が良ければ商品化も検討します♪」
画面が切り替わる。
【MANUFACTURING CLIP】 ※2分ほどの“製造過程”映像
- 「子どもだけは助けて……」と泣き叫ぶ母親
- 拘束台に固定される。頭部に電極が刺され、意識が途切れる
- 黒い糸のようなものが体表に広がっていく
- 下半身が膨張し、卵嚢のようなものが形成される
- 医療スタッフが淡々と作業を続ける
観客 「おお〜〜」 「これ生きたまま改造してんの?」 「子ども守ろうとしてこうなるとか皮肉だな」
司会 「リディアさんもそうでしたが、子を庇ってこんな……理解に苦しみますねぇ。」
惑星トト襲撃事件――
竹娘は逃げ込んだ避難船の中で、父が息絶えた光景を思い出す。
(……守ろうとしただけなのに。どうしてこんな目に遭わされなきゃいけないの……。)
竹娘の顔から、役目としての表情がすっと落ちた。
観客 「……あれ?」 「さっきまでの疲労ぶりは?」 「なんか空気変わった?」
通路の奥から、 人間の上半身と、巨大なクモの下半身を持つ影が現れる。
「……ロ…シテ……コロ…シ…テ……」
生前の意識が残っているのか判別できない、 無機質で壊れた声。
観客 「うわ、喋ったぞ」 「これマジでやべぇやつじゃん」 「商品化したら売れそう」
クモ女の腹部が震え、 卵嚢から子グモが一斉に飛び出す。
司会 「おっと〜? アクシデント発生♪ 子ども達の方に行っちゃいましたねぇ〜!」
ローズは腰が抜けて動けない。
「ひ……っ……!」
ブリコは震える手で短剣を構え、 ローズの前に立ちはだかった。
「だ、大丈夫……! 私が……!」
観客 「おお、仲間守るとか青春かよ」 「でも無理だろw」
その瞬間―― ブリコとローズの足元に、 青白い雷撃が落ちた。
子グモたちが一瞬で消滅する。
観客 「えっ……?」 「魔法……?」 「何だ今の……?」
竹娘の手には、 青白い光の剣が顕現していた。
「……ごめんなさい。」
竹娘の姿が、 “消えたように”見えた。
次の瞬間―― クモ女の体が静かに崩れ落ちる。 切断面はあまりに滑らかで、 観客には何が起きたのか理解できない。
クモ女の顔は、どこか……安らいでいるように見えた。
観客 「……え?」 「斬……った……?」 「やばくね……?」
ブリコもローズも、ただ呆然と竹娘を見つめていた。
竹娘は無言で、 クモ女の脚の残骸を拾い上げると――
司会の横へ投げつけ、 VIP監視室の太郎を真っ直ぐ睨みつけた。
ドンッ!! クモ女の脚が壁に深く突き刺さる。
司会 「ひいいいっ……!!」
太郎 「こ、小娘が……っ!!!」
観客 「……これ……もうショーじゃなくね?」 「やばいって……あの子……」
その瞬間、 闘技場と観客席を隔てる透明シールドが展開される。
司会 「し、シールド展開!? え、えぇ〜〜!? な、なんで!?」
太郎の声が響く。「……もう、なりふり構うな。 “ヤツ” を投入しろ。」
司会 「は、はいぃぃ!!」
――試合開始から19分。
第四項 十二体の名無し
闘技場の照明が落ち、巨大スクリーンが点灯する。
— B E S T I A R I U M P R O T O T Y P E —
【HISTORICAL RECORD】
・1200〜1000年前の古い記録映像
・地下から回収される下級魔獣「ノーバディ」 (翼長3mのコウモリのような姿)
・政敵や反乱者を“処理”するために利用されていた
・次第に強大・巨大化していくー (映像はここで途切れる)
ローズは息を呑む。
(……あれ……ポップフェラー家の……?)
観客
「へぇ〜古典の教科書で見たやつだ」 「これを兵器化したのかよ」 「実話だったの?(笑)」
【DEVELOPMENT CLIP】
・ノーバディをヒト型に改造する映像
・黒いゲル状の肉体
・首から腹にかけて縦に裂けた“口”
・潜入任務用に調整中
・試作名:ノーバディⅡ
・アクター名:名無し
司会 「とある騎士団にちなんで、試作12体!今日は特別に、全員連れてきました♪」
観客 「この狭い場で12体!? 乱戦で葬る気かよ!!」
――試合開始から22分。
竹娘(彼らが来るまで……残り3分。冷静さを取り戻さなきゃ……。)
12体の名無しが、黒いゲルを滴らせながら入場する。
名無し 「……■■■■……」 (言語にならない呻き)
観客 「うわ、気持ち悪っ」 「でも強そうだな」 「12体なら勝てるだろ!」
竹娘は深呼吸し、 ブリコとローズの前に立つ。
竹娘は光剣を逆手に構え、 シールドに向けて雷撃を叩き込む。
バチィィィン!!
シールドが砕け、 その破片を利用して ブリコとローズの周囲に“即席の防壁”を作る。
ブリコ 「すご……!」
ローズ 「……竹娘さん……」
観客 「おい!?シールド壊したぞ!?」 「やばいって!!」 「司会!何とかしろよ!!」
司会 「ひ、ひぃぃっ……!!」
名無しが一斉に竹娘に襲いかかる。
竹娘は―― 無表情のまま、淡々と、正確に、静かに 次々と撃破していく。
・1体目:雷撃で消滅
・2体目:光剣で貫く
・3体目:跳躍して首元を断つ
・4体目:背後からの奇襲を反転して叩き落とす
・5〜11体目:ほぼ一瞬で処理
観客 「……え?」 「何体倒した?」 「数が……減ってる……?」 「怖……」
司会 「だ、だめえっ……!全然 歯が立ってない……!!」
太郎 「……化け物め……」
竹娘(あと1分…… ここで倒したら……時間を稼がないと…… ――もう1回女優、演ります!)
わざと攻撃を受け、 地面に叩きつけられる。
観客 「よっしゃああ!!」 「やっと効いた!!」 「殺せーーー!!」
ローズ 「竹娘さん!!」
ローズは走り寄ろうとするが、 防壁に阻まれる。
ブリコ 「ローズちゃん、だめ!!」
名無しが竹娘の髪を掴み、 ゆっくりと持ち上げる。
「……■■■……」
観客 「とどめだ!!」 「やれぇぇ!!」
――25分経過。
竹娘の目が―― 一瞬だけ、冷たく光る。
「……なーんちゃって。」
光剣が閃き、 最後の名無しは静かに崩れ落ちる。
第三幕 闘技場からの脱出
第一項 捕縛と救出
その瞬間、闘技場の照明がバツンと落ちた。
観客
「えっ……?」
「停電……?」
「何が起きてる!?」
暗闇の中で――
轟音。
次の瞬間には、すべてが“終わっていた”。
観客の目には映らない速度でクイラ&セレグレアの奇襲ーーー
セレグレアは観客席前方の司会を押さえ込み、そのまま闘技場内へ滑り込む。
同時に、クイラはVIP席の太郎を拘束し、防弾ガラスをいとも簡単にぶち破って闘技場へ降り立った。
司会「痛い、痛ぁあい!!」
太郎「あが……な、何だ貴様――っ!?」
クイラ「おしゃべりの時間ねーんだわ。姉御、いつものよろしく。」
セレグレアは無言で二人を縛り上げ、顕現した兎型の召喚獣の口へ“収納”するように飲み込ませる。
クイラはブリコとローズを両脇に抱えた。
「セクハラで訴えねーでくれよ嬢ちゃんたち。オレ、こう見えて繊細なんだわ。」
ブリコ「ひゃっ……!」
ローズ「……っあ!」
セレグレア
「いい役者だったぜ~竹娘。
こっちだ。兎娘が脱出ポイントで待機している。」
クイラ
「LPSD機動隊がココに来るまでにとんずらだな。」
竹娘
「……了解っ♪」
ブリコとローズは暗闇の中、竹娘の声に安堵した。
――この間、わずか1分。本来の目標5分を大幅短縮。
第二項 LPSD機動隊突入
非常用電源が作動し、闘技場に赤いライトが点灯する。
観客
「うわっ、まぶっ……!」
「何だよこれ……!」
次の瞬間、
LPSD機動隊が四方から突入。
・観客席に催涙ガス
・通路から武装隊員
・ステージ上は完全制圧
観客
「やめろ!!」
「俺は客だぞ!!」
「違う!私は関係ない!!」
だが逃げ場はない。
その時 観客席の“脱出艇システム”が作動する。
観客席の後方がガコンと開き、
座席ごとレールに乗って後方へ滑り出す。
・観客は座ったまま固定
・座席がそのまま“個人用脱出艇”にドッキング
・レールが加速し、闘技場外へ射出
・脱出艇は自動航行で散り散りに逃走。入場の際に登録した住所に向かう様だ。
観客
「ちょっ、ちょ待てよ!!!」
「うわあああああ!!」
「どこに飛ばす気だよ!!」
竹娘(……観客まで“商品”みたい。)
第三項 兎娘との”再会”
脱出ポイントの薄暗い通路。
非常灯の赤い光が、揺れる影を長く伸ばしている。
その奥に――
耳の長い金髪ツインテールの少女が、腕を組んで立っていた。
「……よぉ、おっそいぞ、フィニ。……じゃなくて、今は竹娘だっけか。
お前がルナルナ王室にコキ使われてるとこ、見に来てやったよ。」
竹娘はその声を聞いた瞬間、足が止まった。
「……エル……?」
その名を口にした途端、 喉が震え、胸の奥が熱くなる。
兎娘はわずかに目を細め、 竹娘の言葉を遮るように指を立てた。
「ストップ。ここじゃ“兎娘”。」
竹娘
「……ごめん……あの時、私……あんたを置いて……」
兎娘――ネザーランド・フォン・エルザェムは、
ため息をつき、竹娘の額を軽く小突いた。
「気にすんなって。あの状況で誰が誰を助けられたってんだよ。
お互い、生き残っただけで十分だろぅ?」
竹娘の目に涙が滲む。
クイラ
「え、知り合い同士だったのかよ? 兎団のヤツも人が悪いぜ〜。
ま、感動の再会はルナ=クラリオンに戻ってからお願いします。」
セレグレア
「急ごう。この星、もうすぐ封鎖される。」
兎娘
「ほら、行くぞ。泣くのは帰ってからにしろ、フィ…竹娘。」
竹娘は涙を拭い、小さく頷いた。
「……うん。
久々に鼻水出た。
帰ろう、エ…兎娘。」
救出艇が発進し、惑星アドレナの空を離れていく。
ブリコとローズは竹娘の手を握り、静かに目を閉じた。
第四幕 帰るべき場所
第一項 救出艇の中で
ルナ=クラリオンに向かう救出艇の中。
緊張が解け、ようやく皆が座席に腰を下ろす。
太郎と司会には、全身をがっちり固定する拘束具が嵌められていた。
腕も脚も動かせず、上半身は椅子に吸い付くように固定されている。
口元には分厚いマスク状の拘束具が装着され、
外側からは一切声が漏れない構造になっていたが――
首に巻かれた金属リングが、声帯の振動だけを拾って“音声として外部に出す”仕組みになっている。
皮肉にもこのリングは、闘技場で生贄に着けられていた首輪と同じ技術が使われていた。
クイラ
「お前ら、よく頑張ったよ。もう安全圏だ。」
セレグレア
「竹娘、お前もよくやった。あの演技、プロ顔負けだったな。女優でも食っていけるんじゃないか?」
竹娘
「なかなかの役者だったでしょ!でもセリフがつくとダメなんですな。大根役者なので。」
クイラ
「大根でも売れる時代だぜ?」
セレグレア
「おい、誰が大根足だ。」
クイラ
「足じゃねぇよ!!
誰が聞いても“演技の話”だっただろ!!
言い出したの姉御じゃねぇか!!!」
セレグレア
「……そうだったか?なら許す。」
クイラ(許す基準どうなってんだよ…… 許されなかったらどうなるんだよ)
ローズ
(お母さん……ありがとう。
お母さんと、この人たちのおかげで……私、生きてるよ……)
ブリコ
「はぁぁ……生きてる……!
竹娘ちゃん、ほんとにすごいよ……!
あの蹴り!雷撃!見えない斬撃!
何より、怯えきってた私に……
『ブリコちゃん、君のことは、私が必ず守る(キリッ)』
……って、惚れちゃいそうだったよ!」
竹娘
「…私を信じて、とは言ったけど!?そんなも顔してないよ!?」
ブリコ
「してたの!私の目にはそう見えたの!で、竹娘ちゃんの恋人ってどんな人なの?
ねぇねぇ!!」
カウガールビキニ姿でにじり寄るグラビアアイドルにたじたじの竹娘
「えっ……こ、恋人……?」(少~しずつ耳までほのかに赤くなる)
「(すっごい迫力……色んな意味で)
え、えっと……
今までボーイフレンドも……
いたことなくて……
でも……今は気になる子は……
いるかも……?」
ブリコ
「ウソ!? 竹娘ちゃんレベルで!?
逆に奇跡じゃん!!
でも“気になる人はいる”……
って、いやぁあん、一途な恋の予感!!!
やっぱり銀河級の戦乙女である前に 女の子 なのね。」
ローズ
「ちょ、ちょっと……落ち着いて……。
でも……竹娘さんほどの方が仰る“気になる人”って……
どんなお方なのか、確かに気になるわ。」
ブリコ
「でしょ!?
恋にはね、流れってものがあるの!!
まずは“気になる”でしょ?
次に“目で追っちゃう”でしょ?
その次に“距離が近いとドキドキする”でしょ!?
で、最終的には――
ねぇ竹娘ちゃん、初デートはどこ行くの!?
手は繋ぐの!?
告白はどっちから!?
ねぇねぇ!!」
竹娘
「えっと…気になる前に
美味しい料理を作ってもらって
部屋に泊めてもらって
一緒の布団で寝て……
気になりはじめてから…一緒に
商店街で買い物して
映画を観て
自動車でドライブして
“悪党ぶってる良い人達”と戦ったの。」
ブリコ
「えっ……えっ……ええっ!?
ちょっと待って!?それ全部“気になる前後”なの!?
恋愛イベント全部クリアしてから“気になってる”の!?
逆ゥゥウ!!」
(肩を掴んで揺さぶる)
ブリコ
「竹娘ちゃん、それもう恋人突入コースだよ!?
普通は最後に行くやつ!!
恋愛チュートリアル飛ばして本編入ってるよ!!」
ローズ(すごいわ…… その殿方……どれほど信頼されているの……?)
兎娘
「はぁああ!?
“気になる前”に同じ布団で寝てんのかよ!!
チャンバラとか虫取りばっかしてたお前が、バグってる、恋バナしてる……」
竹娘
「む!?(#^ω^)
お互い10歳までしか知らないんだから黙っとき!!」
エルザ
「“恋よりカブトムシ”だった女にツッコミいるのは当然だろ。」
竹娘
「聞き捨てならんな。キミ、カブトムシとクワガタムシの違いも分からないのかな?」
兎娘(あ、クワガタ派だっけ……お前、そーゆーのは譲らねぇよな。)
ブリコ
「ねぇ竹娘ちゃん、肝心の“気になる人”のこと、まだ聞いてないなぁ?
どんな人なの!?優しい?強い?かっこいい?
それとも……」
竹娘は両手を頬に当て、なぜか“語りモード”に入った。
「誕生日7月7日。
身長は……目測で158センチくらい。
体重は……抱えた時の“ふわっ”とした感じで47キロくらい。
13歳で、優しすぎて心配になる子で……
でも一緒にいると救われるのは私の方なんだよね〜……
そしてーーー言葉にできないくらい美味しい料理を作るの」
ブリコ
「キャーーッ!!ファーッ!?年下くんなんだ!?///
え!?ちょ、ちょっと待って!?
“抱えた時”って何!?
竹娘ちゃん王子さまなの!?
守ってあげたい系男子を逆に守る系女子!?
ギャップ萌えすぎるんだけど!!」
竹娘
「…やっぱり 今までの全部
嘘、ということにしていただいて良いですか?」
ローズ
(……人智を超えた存在…ぽくないですわ。)
クイラ(小声)
「姉御も混ざってくれば?」
セレグレア
「あんな若人らの…こう、聞いててくすぐったくなる様なっ、会話に入れる訳ないだろぉ!
こちとら、とっくに既婚者だぞ!」
クイラ
「結婚前にいくらでもあっただろ、その手のネタ。
例えば旦那さんが大学受験に落ちた時ーー」
セレグレア
「……(無言の圧)」
クイラ
「すいませんした。」
第二項 砕けた偽名
太郎「おい貴様ら、こんなことしてタダで済むと思うなよ。俺を誰だと思ってるんだ!!!」
竹娘「ん? 鷹栖太郎になりすましてる偽ルナルナ国民さんですよね?……ウルク・ニマンさん?」
太郎「!?」
クイラ「いや空気読めよおっさん。この流れでそのセリフは反則だろ(笑)」
ブリコ
「あなた大っ嫌い!!!
さっきまでピーチクパーチクうるさかった司会さんみたいに、
黙ってそこで縮こまってて!!!」
司会
「わ、私の名前はリン、リン・カサン!
本名よ!!!
ごめんなさいブリコさん、ローズさん!
今までのは、ただの、ただのお仕事だったの!
そこのゲス野郎に脅されて仕方なく……!」
(ブリコとローズ、同時に一歩だけ後ろへ引いた)
ブリコ
「嘘!!!
あんなに酷い言葉の雨あられ、
“仕方なく”だったら出てくるはずない!!!」
ローズ(……お母さんの死を……あんなふうに……)
悔しさと痛みで目に涙を浮かべる
リン
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!
でもショーの映像、生体兵器と違法コピー化粧品で
カネ儲けしてるそこのクソゲス野郎よりマシでしょう!?」
太郎
「貴様……誰に向かって……」
リン
「五月蝿い!この特権階級気取り背乗りゲロカスクソゲス野郎!
お前はもう終わりよ! ……私もだけど。」
――救出艇の空気が、一瞬だけ静まった。
太郎
「……お……あう……あ……あが!!!?」
兎娘
「何 その沈黙の破り方」
太郎の顔の半分が“ペリッ”と剥がれ落ち、複眼が覗きはじめる。
ブリコ
「ひっ……!? なにこれ!?きっしょ!!! さっきのカマキリ人間と同じ!?」
竹娘(ん~、、、キリギリス亜目……その中でもコオロギ科に似てるかも)
セレグレア
「……んー、こりゃ自分で変身してるんじゃねぇな。 “誰か”の口封じだな。」
太郎
「うぎゃあああああああ!!!」
リン
「やったー、はい、バイバーイ!永遠にーーー、存在、終了ーーー!!」
――しかし変化は途中で破綻し、太郎の身体は粉末状の微粒子へと散った。
「んごおおおおおおっ!」
――ドパァンッ。
全員
「…………」
竹娘
「……結局 何だったんだろ、この人。怒鳴って イキって 粉になって…。」
兎娘
「フン、どーせロクなヤツじゃねーよ。
粉末に……なっちゃうんだから。」
全員(すげー雑にまとめた……)
兎娘
「……うへぇ、汚ねー……とりあえずまとめとくわ…… 掃除係じゃねぇんだけどな……」
兎娘は震える手で、粉末の漂う空間にそっと手をかざす。
(神通力:ミストコレクター系 発動)
大気中の電界(Electric Field)と、兎娘自身が持つ微弱な静電気(Bio-Electrostatic)が共鳴し、
微粒子化した太郎の遺体が“吸い寄せられるように”一点へ集束していく。
ブリコ
「わぁ……なんか…… “高性能掃除機”みたい……」
エルザ
「う~ん、どちらかというと……集塵機?」
やがて、黒光りするサッカーボール大の球が出来上がった。
竹娘「……フンコロガシみたいだね。」
兎娘「やめろ!!片付けてやったのに何て言い草だ!」
リン「やったー! 今日から私は自由よ!!! ……この後 牢獄生活だろうけど。」
竹娘
「司法取引できる情報をお持ちではありませんか?
証人保護プログラムで別人として暮らせる道があるかもしれません。」
リン
「あるわよ!?
山ほどあるわよ!?
むしろ吐かせて!?
今なら何でもゲロるわよ!!!」
ブリコ
「竹娘ちゃん優しい!
リンさんは…打首獄門にならないだけ
ありがたく思え…っ!!!」
ローズ(この方達……すごい世界で仕事してるのね……)
第三項 天宮城の夜 オヤスミナサイ
救出作戦を終えた一行は、天宮城の居住区へ案内された。
長い戦闘と脱出の疲労が、ようやく身体にのしかかってくる。
「まずはフィ……竹娘の汗のニオイを落とさなきゃな。」
兎娘が腕を組んで言う。
「素直に“風呂入りたい”って言えんのか!」
竹娘が即座にツッコむ。
「竹娘ちゃんは臭くないよ!
これは“助けに来てくれた匂い”なんだから!」
ブリコの謎擁護で、会話の方向が行方不明になる。
そんなやり取りをしながら、一行はそのまま浴場へ向かった。
天宮城の浴場は、男女で区切られていない“軍用仕様”の大浴場だった。
広い洗い場に湯気が立ちこめ、湯船は湖のように広い。
「……なんで全員で一斉に入るんだよ……」
クイラがぼそりと呟き、落ち着かない様子で身体を洗い始めた。
セレグレアとブリコは、割り切りっているらしく堂々と洗い場に立ち
他の女性陣はタオルやバスローブで普通に入浴している。
ブリコはクイラをちらりと見て、にこっと笑った。
「クイラさんは変なことしないでしょ? だから大丈夫だよ〜。」
クイラは一瞬固まり―― 次の瞬間、その場で腕立て伏せを始めた。
床がわずかに揺れるほどの勢いで、 秒速3回は超えている。
「い、いや……!
あんまり大人をからかうんじゃないっ……!
……湯気が熱いなぁ!!!」
セレグレア「……みんな放っておいてくれ。コイツしばらく止まんねぇわ。」
竹娘・兎娘・ローズの三人は、湯気の向こうでブリコの身体を見て思わず目を丸くした。
「少年紙の巻頭グラビアそのまま……」
竹娘がぽつりと呟く。
「う、うぉおおおお。」
兎娘は言葉にならない声を漏らし、
「……すごい迫力……」
ローズは素直に驚嘆した。
「うひゃあ、サービスショットだよ〜」
ブリコはピースしながら肩まで湯に沈んだ。
クイラは耐えきれず、
「お、お先に失礼!」
と逃げるように退散していった。
拘束具をつけられたままの司会リンは、医療スタッフによりシャワーで丁寧に洗浄されていた。
「ぷっはぁあっ、ちょ、ちょっとぉ! 少しは優しくしなさいよぉおお!!!」
リンの抗議が湯気に吸い込まれていく。
入浴後、それぞれの部屋へ向かう。
クイラは拘束された司会リンを連れて自室へ戻る。
「せっかくだから色々話してくれよ。バラエティ番組の裏話とかさ!」
「いやぁああ!やめてよ〜!怖いことしないでよ〜!」
「しねぇよ!話聞くだけだって!」
軽口と悲鳴が廊下に消えていく。
セレグレアは無言で射撃場へ向かった。
「……まだ撃ち足りない。」その背中はいつも通りだった。
ブリコとローズは、竹娘と兎娘の二人部屋へ案内される。
「乳デカアイドル、お前は床で寝ろ。」
兎娘が当然のように言う。
「ひどい〜!じゃあ竹娘ちゃんと一緒に寝るもん!」
ブリコはぷりぷりしながら竹娘のベッドを覗き込む。
竹娘は苦笑しながら言った。
「……まあ、好きにしていいよ。しりとりでもする?」
ローズは控えめに手を挙げた。
「あの……兎娘さん、私……」
兎娘は一瞬だけ目をそらし、
「……じゃあ、ローズさんも私のベッドでいいよ。」
と小さく呟いた。
竹娘はその様子を見て、
(……相変わらずだな)
と心の中で微笑んだ。
灯りが落ち、静かな夜が訪れる。
竹娘の隣では、寝相の悪いブリコがいつの間にか寄ってきて、
竹娘に抱きついて寝息を立てていた。
「……寝相悪いなぁ……」
竹娘は天井を見つめながら、ふと笑った。
「そういえば……出会ったあの日、種ピーと……」
あの夜のことを思い出す。
部屋着を勝手に借りて、機材を広げ、唐突にしりとりを始め、
そして――
種男の布団に平気で潜り込み、抱きついて寝た自分。
「……あれ、今考えると……めちゃくちゃ迷惑だったよね……」
今さらながら、気まずさと申し訳なさが胸に広がる。
明日は王室会議。
LPSDとの合同会議を控えた、嵐の前の静けさ。
だが今だけは、救われた命たちの安らかな寝息が、天宮城の夜を優しく満たしていた。
「Battle of Besitiarium」完
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