序章 続節「月影に残されたふたつの欠片─ルナルナ再誕録を経て」
白銀歴1204年9月22日(月)
惑星ルナ=クラリオン 星都独立領ルナルナ 王室移動要塞「天宮城(うぐしろ)」居住区にて
フィニ・ウィアローク 改め 月京 竹娘(つきのみや たけのこ)の独白
(……星都独立領ルナルナ。
パパが生まれた国。
かつては影で、政府要人だけでなく、委託を受けた団体や“正義”を名乗る組織までもが、
税と行政を私物化し、国民を搾り取っていた国。)
(……私一人では、世界の影に飲まれて終わっていた。
でも――この国の光を借りて歩めるなら…。)
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序章 再起たけのこ譚
続節 月影に残されたふたつの欠片─ルナルナ再誕録を経て
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1.革命の夜
◆ ― 影が崩れた夜、世界は静かに反転する ―
白銀歴1203年12月31日(火)
星都ルナルナの夜は、異様なほど静かだった。
森の上空に浮かぶ天宮城は、
灯りを落とし、ただ月光だけを受けて淡く青く輝いていた。
武装は沈黙し、内包する航空兵器の作動音すらない。
その夜、革命は“音もなく”始まった。
腐敗政府の通信網は沈黙し、七つの省庁が同時に制圧された。
王室は争わず、ただ“証拠”を公開した。
それは、世界を黙らせるための静かな刃だった。
1-1. 省庁の通信網が、静かに落ちる
21時03分。
財務省の内部サーバーが停止した。
続いて外務省、農水省、文科省、厚労省、検察庁、国税庁。
破壊の痕跡はない。
ただ、王室が長年蓄積してきた“内部告発データ”が
省庁の中枢を一瞬で麻痺させた。
職員たちは混乱したが、誰一人として抵抗しなかった。
自分たちが何をしてきたかを、彼ら自身が一番よく知っていたからだ。
1-2. 国民の端末に“事実”が届く
21時17分。
国民の端末に、王室から一斉通知が届いた。
《税金の使途を公開します》
画面には、
省庁の裏帳簿、
架空団体への補助金、
政治家の不正献金、
国税庁が黙認した脱税の記録が
淡々と表示されていく。
怒号はなかった。
暴動もなかった。
権力者の悪事を暴いても追求すらできない、
それが当たり前の国に成り果てていたからだ。
ただ、
静かな失望と、深い理解だけが広がった。
「……やっぱり、そうだったんだ。」
国民は、
怒りよりも“納得”していた。
1-3. ルナルナ国外ウラガネの沈黙
同時刻、
各国の中枢にも“ごく一部の証拠”が送られた。
そこには、
ルナルナ議員919人中829人以上が他国のスパイだった証拠が記されていた。
- 資金の流れ
- 密約の録音
- 国際財団への献金とキックバック
- 国際機関の不正調達
- 企業の違法研究データ
- 外国人を背乗りさせることによる国籍偽造
そして最後に一行。
《これはごく一部です》
国外の為政者、国際機関の幹部、巨大財団の理事たちは理解した。
「ルナルナを攻撃すれば、
我々の暗部が暴かれる。」
その夜、世界は一斉に沈黙した。
1-6. 静かに、国が反転する
22時01分。
王室は政府を正式に解任した。
銃声は一発も鳴らなかった。
赤イ兎特殊部隊3名が、腐敗した為政者と役人を捕縛し、無人航空兵器に乗せてルナ=クラリオン領内の衛星にある秘密施設に収容した。
街はいつも通りで、
ただ夜風だけが白銀の外殻を撫でていた。
王妃笹真貴は、天宮城のバルコニーから静かに呟いた。
「革命とは、静けさの中で完結するもの。」
その言葉とともに、ルナルナは再誕した。
翌年、竹娘が天宮城の扉を叩くことになるとは、まだ誰も知らない。
2.白銀歴1204年始の混乱
2-1. 海外ウラガネ会議:焦燥と恐怖
白銀歴1204年1月1日(水)未明。
ある国際都市の地下会議室で、
各国のウラガネ幹部が集まっていた。
- 国際機関の幹部
- 多国籍企業のCEO
- 財団の理事
- 外交官の影武者
- 情報機関の黒幕
彼らは世界中の政府を経由して作らせた利権から、
甘い汁だけを吸い上げてきた“世界の穀潰し”たち。
しかし今、その影が揺らいでいた。
「……ルナルナ王室は、どこまで把握している?」
「この“ごく一部”という文言が問題だ。」
「反論した瞬間、我々の犯罪が暴露される。」
「声明は出すな。沈黙しろ。」
彼らは“もうルナルナからは甘い汁を吸えない”ことを悟っていた。
2-2. 末端ウラガネは何も知らない
一方、
海外の末端ウラガネ――
活動家、NGO、メディアの一部、利権団体――は
何が起きているのか理解すらできていなかった。
「なんで上層部は黙ってるんだ?」
「ルナルナ王室を批判しないの?」
「指示が降りてこない……?」
彼らは自分たちが“影の末端”であることすら知らない。
だから混乱し、沈黙の理由を理解できない。
その混乱が、
多くのウラガネ内部の瓦解を加速させようとしていた。
3.白銀歴1204年前半を終えたルナルナ
白銀歴1204年6月10(火)
王室が“すべての税金の使途”を国民に開示してから、半年が経った。
その間に、腐敗した為政者と役人たちは、
無人航空兵器に乗せられ、
ルナ=クラリオン領内の衛星にある秘密施設へと静かに移送された。
彼らの本体は、施設地下のカプセルに収容されている。
そして、リアルタイムで思考をリンクできるアバター(義体)が与えられ、
本人として、あるいは別人として、ルナ=クラリオン領内で暮らしていた。
国家の病巣だった省庁の腐敗は、ようやく是正されつつあった。
かつて――
- 財務省は国民を貧困化させ、
- 外務省は自国民を犠牲にし、
- 農水省は農家を衰退させ、
- 文科省は教育を歪め、
- 厚労省は健康を害し、
- 検察庁は犯罪者を守り、
- 国税庁は権力者の脱税を黙認した。
国民負担率は 69%。
国は、国民の血を吸って生きていた。
◆ 結果は、あまりにも残酷だった
しかし、腐敗を取り除いただけで――
- 国民負担率 7% で倒閣前と同じ社会保障が維持できることが判明し、
- 19% あれば老朽化したインフラを 10年以内に全て再整備できる
と分かった。
政府が訴えていた「増税の必要性」は、ただの嘘だった。
革命の夜と同じくー
国民は驚かなかった。
怒りもしなかった。
ただ、静かに理解した。
今までと同じ生活で、むしろ豊かになれる。
その事実は、
革命の夜よりも深く、
国民に希望を与えた。
4.いざ行かんヒノモトへ
白銀歴1204年9月24日(水)
天宮城・王室図書館《月環の書庫》
竹娘は新人研修を終え、白銀の書架が静かに並ぶ書庫へと戻ってきていた。
「三王室の役割、
倒閣後の“腐敗再発防止”、それに“情報封鎖解除”を担う秘密組織……
もうお腹いっぱい。」
竹娘は肩をすくめ、くすりと笑った。
「やっぱり私は、与えられるより
自分から探しに行くのが好き♪」
白イ三日月・庶務官、隠岐永 公衡(おきなが きみひら) に教えられた通り、
書庫の端末を操作すると、旧政府から押収した三百万ページに及ぶ
“封印指定文書”へのアクセスが開かれた。
国民は閲覧を禁じられ、三衛王室ですら解析が終わるまでは公開に踏み切れないと判断した記録群。
その中で、竹娘の目に見覚えのある紋章が映った。
表紙に月京家の紋。「かぐや姫文書」
竹娘は息を呑み、文書を隅々まで確認した。
しかし読み取れたのは、
かろうじて復元された航行記録の断片だけだった。
◆ 航行記録:白銀歴004年
《航路:惑星ルナ=クラリオン → 惑星テラ=プレアデス圏内 ヒノモト》
《任務目的:■■■■(政府指定)》
《同行者:記録削除》
《降下地点:京都周辺(Q2F-9ZK-1M座標一致)》
《地表に異常反応:霊物因子の高濃度域》
《接触対象:■■■■》
《交戦記録:破損》
◆ 地表活動ログ
《地表降下:成功》
《現地勢力との接触:平安京:■■■■》
《任務進行度:■■■■》
《回収物:分類不能物質(5個中3個)》
《未回収:2個(別働隊が追跡中)》
《備考:未回収2個に関する記録は破棄》
《封印処理:政府管理下へ移送(3個)》
(……“欠片”。
これは“悪魔のカケラ”で間違いない。)
◆ 帰還ログ
《帰還時刻:記録破損》
《随伴者:なし》
《遺体損傷率:22%》
《最終ログ:代理記載》
《代理人証言:未回収2個こそが別働隊の“本命”だった(詳細破損)》
(……遺体? 代理人?
帰還したのは“本人”じゃない?)
◆ 最終ログ(最適化版)
《任務評価:不明》
《政府報告書:封印指定》
《未回収2個:記録ごと破棄(理由不明)》
《閲覧権限:王室にも秘匿》
《備考:ヒノモトに残存可能性あり》
(……残存反応。
1200年経っても“何か”が残っている?)
竹娘は端末を閉じ、深く息を吐いた。
「この航行記録は、当時の政府が
最も深く隠した文書の一つ。
かぐや姫が何を見て、何を残し、
何を恐れたのか――
今となっては、詳細は誰にも分からないのか。」
そして、不自然に残された座標 Q2F-9ZK-1M を見つめた。
「……これ、罠かな?」
だが竹娘は微笑んだ。
「でも、罠でも行くんだよね、私は。」
◆ 暗号の解読
「この時代、ルナルナでは簡易暗号 Grid-36 が警察や軍でよく使われてたよね。」
竹娘は指先で空中に小さく数字をなぞりながら続けた。
「緯度・経度を36進数に変換しただけだから、逆算すれば――」
・緯度:34.8101°
・経度:135.7702°
竹娘は座標の現状を確認するために個人端末を開いた。
「惑星テラ=プレアデスの現在地だと、
ヒノモト・京都府の竹林。
しかも最近まで、同じ家系の私有地……」
竹娘は目を細めた。
「御伽話で、かぐや姫が老夫婦と出会ったのも竹林……
これは偶然じゃない、と私の第六感が言っている。」
竹娘はゆっくりと立ち上がり、窓の外の月を見上げた。
「行ってみますか。」
(……惑星トトにも持ち込まれていた、悪魔のカケラ。
パパに関係する何かがある可能性は…おそらく低い。
でも分かるかもしれない。あの記録の“空白”を埋めるものが。)
竹娘は端末を閉じ、軽く伸びをした。
「ヒノモトへの入国許可、取ってもらおう。
もちろん――
空港経由なしの、プライベート宇宙船ライセンス版で!」
その声は軽やかだったが、その瞳には確かな決意が宿っていた。
(ずっと胸の奥でざわついてた。
“何かが呼んでる”って。
行けば、きっと分かる。)
こうして竹娘は、
まだ誰も知らない“合戦”の始まりへと歩き出した。
「月影に残されたふたつの欠片─ルナルナ再誕録を経て」完
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